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マーレ
PLATE — MÆRE
SLAVI · スラヴ神話
MÆRE

マーレ

マーラ · マール · メア

ヘンリー・フュースリ《悪夢》(1781年、デトロイト美術館蔵) PUBLIC DOMAIN

眠る者の胸に坐り、あるいは「乗る」ことで悪夢をもたらすゲルマン・スラヴの悪霊。英語の nightmare、独語の Nachtmahr など、ヨーロッパ諸語の「悪夢」はこの名を含む。

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解説

概要

マーレ(古英語 mære、古ノルド語 mara、ポーランド語 mara / zmora)は、ゲルマンおよびスラヴの民間伝承に語られる悪意ある存在である。眠る者の胸の上に坐り、歩き、あるいは「乗る」ことで悪夢をもたらす。

胸に載られた者は息が詰まり、冷や汗をかき、金縛りに陥る。多くの場合は女の姿をとり、獲物に取り憑くための魔力と変身の能力を備えている。

英語の nightmare、フランス語の cauchemar、ドイツ語の Nachtmahr——ヨーロッパ諸語で「悪夢」を意味する語の多くが、この存在の名を含んでいる。

登場する物語

語の系統は広い。古英語 mære から中英語を経て英語の mare へ。北欧では古ノルド語 mara からデンマーク語 mare、アイスランド語 mara、スウェーデン語 mara へ。オランダ語 nachtmerrie、低地ドイツ語 mahrt、高地ドイツ語 mahr。いずれもゲルマン祖語 *marōn に遡る。フランス語 cauchemar の -mar は、古フランス語を経てゲルマン語から借用されたものである。

多くの研究者は、この語を印欧祖語の語根 *mer- に遡らせる。押しつぶす、圧する、抑えつけるという意味である。フィンランド語とカレリア語では、この存在を「圧す者」(painajainen)あるいは「乗る者」(ajajainen)と呼ぶ。デンマーク語とノルウェー語で悪夢を意味する語は「マーレの騎乗」(mareridt / mareritt)、アイスランド語では「マーレの踏みつけ」(martröð)、スウェーデン語とフィンランド語では「マーレの夢」(mardröm / painajaisuni)である。ただしエーヴァ・ポーチはギリシア語モロス(μόρος、「破滅」)と同源とみる。文献学者エレアザール・メレティンスキーは、スラヴ祖語 *mara が遅くとも前1世紀にゲルマン語へ入ったと考えた。

信じられていた被害は、人だけに及ぶものではない。マーレは馬にも乗り、朝には馬が汗まみれで疲れ果てているとされた。眠る人や獣の髪や毛を絡ませることもあり、その結果できる縺れをスウェーデン語でマルフレートル(「マーレの編み髪」)、ノルウェー語でマーレフレッテルと呼ぶ。この信仰は、ポーランド辮髪と呼ばれる毛髪の疾患を説明するために生まれたとみられる。木さえも乗られると考えられ、枝が絡み合った奇形の松——海岸の岩場や湿地に育つ、ねじれた低い松——はスウェーデンでマルタッラル(「マーレ松」)、ドイツでアルプトラウム=キーファー(「悪夢松」)と呼ばれた。

ポール・ドゥヴロウによれば、マーレには、恍惚状態にあるあいだ魂が獣の姿をとって出歩く魔女が含まれる。蛙、猫、馬、野兎、犬、牛、鳥、そしてしばしば蜂や雀蜂の姿である。

ドイツの伝承では、アルプ(Alp)という類似の存在と関連づけられる。ドイツ語の悪夢はアルプトラウム(「アルプの夢」)である。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、ヘンリー・フュースリの《悪夢》(1781年、デトロイト美術館蔵)である。仰向けに倒れた女の胸の上に、猿めいた小鬼が坐り、背後の帳から白目の馬が首を突き出している。

この絵は民間伝承の写生ではない。18世紀末のロンドンで描かれた油彩であり、公開時から異様な評判を呼んだ作品である。それでもここに掲げるのは、胸に載る存在という一点において、この絵が伝承の核心を最も明瞭に視覚化しているためである。以後のヨーロッパにおける「悪夢」の図像は、ほぼこの一枚を経由している。

象徴として押さえておきたいのは、この存在が語彙のなかに生きているという点である。ヨーロッパ諸語の「悪夢」という語は、いずれも「マーレに乗られること」を指す表現から生じた。悪夢とは夢の一種ではなく、何かに乗られている状態を意味していた。金縛りという生理現象に、この文明が与えた説明が語のうちに残っている。

関わる伝承

スラヴ圏ではモラ、ズモラなどと呼ばれ、スラヴの民間信仰に組み込まれた。生きた人間——多くは女——が夜になると魂を抜け出させてマーレになるという説明が広く行われ、魔女信仰と結びついた。

北欧では『ヘイムスクリングラ』所収「ユングリング家のサガ」に、ヴァンランディ王がマーレに踏み殺される話がある。フィンランドの女がその夫を呪ってマーレを差し向けたとされ、王は寝ているあいだに足を、そして頭を踏まれて死ぬ。人が差し向ける存在としてのマーレの、最も古い記録の一つである。

なお、仏教の魔王マーラ(Māra)とは無関係である。名が似ているのは偶然にすぎない。

文化的足跡

この存在の名は、ヨーロッパの言語のなかに最も広く残った超自然的存在の名の一つである。英語で夜に見る悪い夢を nightmare と呼ぶかぎり、この存在の名は毎日どこかで発音され続けている。

フュースリの絵は美術史上の名画として今も引用され、精神分析や睡眠医学の文献にもしばしば図版として現れる。伝承が説明しようとした金縛り(睡眠麻痺)は、今日では生理学的に説明される。それでも、胸に何かが載っているという体験の記述そのものは、千年前から変わっていない。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1262457 — 骨格データの出典
Commons
Mara (folklore) — 図像カテゴリ