世自在王仏
せじざいおうぶつ · ローケーシュヴァラ・ラージャ · 世饒王仏
阿弥陀如来の菩薩時代である法蔵菩薩の師仏。二百十億の仏国土を示し、法蔵はこれを五劫思惟して四十八願を立てた。燃燈仏より五十四番目の過去仏。浄土真宗の嘆仏偈で唱えられる。
解説
概要
世自在王仏は、大乗仏教の信仰対象である如来の一尊。法蔵菩薩——阿弥陀如来の菩薩時代の名——の師仏とされる。
梵名は「ローケーシュヴァラ・ラージャ」。その意は「世間において自在である王」「世間のなかの自在者の王」であり、「世自在王」と訳される。別名は、音写された「楼夷亘羅」と、意訳された「世饒王仏」がある。
無量寿経における位置
法蔵菩薩が「嘆仏偈」で讃嘆し、「四十八願」「四誓偈」で誓いを述べた相手である。
『無量寿経』によれば、遥かな過去に世自在王仏が世に出たとき、一人の国王が仏の説法を聞いて出家し、法蔵と名乗った。法蔵は師仏に、自らが建立すべき浄土の様子を問う。世自在王仏は二百十億の仏国土をすべて示し、法蔵はこれを五劫のあいだ思惟して、四十八の誓願を立てた。この誓願が成就して法蔵は阿弥陀仏となり、極楽浄土が建立されたという。
つまり、阿弥陀如来の浄土は、この仏が示した無数の仏国土から選び取られたものである。
過去仏の系列
今を遡ること無数劫という遥か過去の時代の仏で、『無量寿経』のサンスクリット本では「ディーパンカラ」(燃燈仏)から過去に遡ること八十一番目に、康僧鎧による漢訳では「錠光如来」より五十四番目に世自在王仏が興出されたと説かれる。
ローケーシュヴァラという語は、シヴァ神や観世音菩薩に対しても用いられている。『ローケーシュヴァラ讃』という書物が存在する。
図像と象徴
固有の図像は乏しく、本サイトも主画像を掲げない。浄土教の絵画において、法蔵菩薩が世自在王仏の前で誓願を立てる場面が描かれることがある。
この仏を規定するのは、阿弥陀の師という位置である。阿弥陀如来がなぜ極楽浄土を持つのか、その起源を語る物語のなかで、示す者として現れる。
「世自在王」という名は、観音の異名ローケーシュヴァラ(観自在)と同じ語を含む。阿弥陀の師と阿弥陀の脇侍が、名を共有している。
関わる神格・伝承
弟子は法蔵菩薩(阿弥陀如来)。燃燈仏を基準とする過去仏の系列に属する。
文化的足跡
浄土真宗において、『無量寿経』の法蔵菩薩の誓願は教義の中核であり、世自在王仏の名は「嘆仏偈」として日常の勤行で唱えられる。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。