燃燈仏
ねんとうぶつ · 定光仏 · 錠光仏
釈迦が前世で儒童梵士として修行していたとき、未来に釈迦牟尼となると授記した過去仏。儒童は髪を泥に敷いて仏に踏ませた。肩から炎を発する姿で表され、ネパールで今日も広く信仰される。
解説
概要
燃燈仏は、仏教の信仰対象である如来の一尊。釈迦が前世で儒童梵士と呼ばれ修行していたとき、未来において悟りを開き釈迦仏となるであろうと予言(授記)した仏である。
燃燈の原名はディーパンカラで、提和竭羅と音写し、定光仏、錠光仏などとも漢訳される。灯火を輝かす者という意味があり、肩に炎をもつ独特な仏である。
釈迦の成仏予言
『瑞応経』などによると、釈尊が儒童梵士(菩薩)と呼ばれた過去世において、鉢摩の国に来た折に街の人々が歓喜して水溜りに土を盛り清掃しているので、その理由を尋ねたところ「まもなく錠光如来がここに来臨し給う」と聞いたので、ともに道普請に加わった。
しかるに道がいまだ完成しないのに、仏が多くの弟子を随えて現われ給うた。すると儒童菩薩は花を持っていた女人より五華をあがない、その花を仏の頭上に散じて荘厳し、自らは鹿皮の衣を脱いで湿地を覆い、足りないところには髪の毛をほどいて泥濘に敷き身を伏せて「仏よ、どうぞ弟子方とともに私の背中を踏んで通り給え」と申し上げた。
燃燈仏はこれを見て、「汝は来世に成仏して釈迦牟尼と名づくべし」と授記した。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ネパール・スワヤンブナート寺院の燃燈仏像である。
肩から炎を発する姿が、この仏に固有の造形である。ガンダーラ美術において燃燈仏授記の場面は、仏伝図の最初に置かれる主要な主題であった。髪を敷いて伏す青年と、それを踏む仏の図は、ガンダーラの浮彫に多数の作例がある。
授記という観念が、この仏を規定する。釈迦が仏になることは、遠い過去に別の仏によって予言されていた。仏が仏を生む系譜の起点に、燃燈仏が置かれている。
ネパールでは、燃燈仏は今日も広く信仰され、ネワール仏教において最も人気のある仏の一つである。
関わる神格・伝承
釈迦に授記した過去仏。過去七仏には含まれないが、二十八仏の系列では第四に置かれる。
『無量寿経』では、燃燈仏より五十四番目の過去に世自在王仏が出たと説かれ、過去仏の系列の基準点として用いられる。
文化的足跡
燃燈仏授記の物語は、東アジアの仏伝図の定型的な主題であり、日本でも『今昔物語集』などに語られる。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。