カイ・カーウース
カイ・カーウース · カイ・カウス · カウィ・ウサン
『シャー・ナーメ』で最も愚かな王として描かれるイランのシャー。悪魔に捕らわれ、鷲に玉座を運ばせて天へ昇ろうとして墜落し、そのたびにロスタムに救われた。息子シヤーヴァシュとは断絶したまま死別した。
解説
概要
カイ・カーウース(カイ・カーウス、カイ・カウスとも)は、大イランの神話上の歴史におけるシャー(王)であり、『シャー・ナーメ』の登場人物である。
カイ・コバードの子であり、王子シヤーヴァシュの父である。カーウースは百五十年にわたってイランを治め、そのあいだ名高い英雄ロスタムにしばしば——次第に渋々ながら——助けられた。孫のカイ・ホスロウが跡を継いだ。
愚かな王
カイ・カーウースは、『シャー・ナーメ』において最も愚かな王として描かれる。
マーザンダラーンの遠征。 悪魔の歌に誘われてマーザンダラーンへ攻め入り、白い悪魔(ディーヴェ・セフィード)に捕らえられて盲目にされた。ロスタムが七つの試練を経て救い出した。
天への飛行。 天へ昇ろうと考え、玉座の四隅に鷲を繋ぎ、その上に肉を吊るした。鷲が肉を追って昇り、玉座も昇った。
しかし鷲が疲れて落ち、王は森に墜落した。恥じて隠れていたところをロスタムに見つけられた。
繰り返される失敗。 王が愚行を犯し、ロスタムが救う。この繰り返しが、両者の関係を規定する。
王権への批判。 『シャー・ナーメ』は、王が常に正しいとは描かない。愚かな王を英雄が支えるという構図は、王権への批判を含むと読まれてきた。
息子の死
シヤーヴァシュが継母の讒言を受けたとき、カイ・カーウースは息子より妃を信じかけた。
火の試練で潔白が証明されたのちも、父子の関係は戻らなかった。和議の誓いを破れという父の命を拒み、シヤーヴァシュは亡命して死んだ。
父が子を失う。 ロスタムが子を殺したのと対をなす。『シャー・ナーメ』において、父と子の断絶が繰り返される。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、白い悪魔に洞窟で鎖につながれたカイ・カーウースの図である。
関わる神格・伝承
子はシヤーヴァシュ、孫はカイ・ホスロウ。ロスタムに繰り返し救われた。
アヴェスターのカウィ・ウサンに対応する。ゾロアスター教の伝統においても、傲慢によって栄光(フワルナフ)を失った王とされる。
文化的足跡
鷲に玉座を運ばせる場面は、ペルシア細密画の主題として繰り返し描かれた。
アレクサンドロス大王の天空飛行の伝説との類似が指摘される。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。