ジャランダラ
ジャランダラ · チャランタラナ · Jalandhara
シヴァの第三の目の火が海に投じられて生まれたアスラ。三界を征服したが、妻ヴリンダーの貞節が力の源であったため、ヴィシュヌが夫に化けてこれを破らせ、シヴァに討たれた。ヴリンダーの灰から聖バジルのトゥラシーが生じた。
解説
概要
ジャランダラ(Jalandhara、「水を保つ者」の意)は、チャランタラナとしても知られる、ヒンドゥー教のアスラである。その物語の詳細は『シヴァ・プラーナ』に記されている。
誕生
ある日、インドラと神々の導師であるブリハスパティがシヴァへの巡礼のためにカイラーサ山に登っていると、道を遮るように立つ修行僧に出会った。その修行僧は実はシヴァであり、インドラたちが自分の正体を見抜けるかどうか試していたのだが、インドラはまったく気づかなかった。
それどころか、修行僧に扮したシヴァが何を問われても無口のままだったので、インドラは怒りのあまりヴァジュラを振るって彼を焼き殺そうとした。これに対し、シヴァは第三の目に火を宿して怒りの形相を示した。ブリハスパティはようやく修行僧の正体がシヴァであることに気づき、両神は平謝りして許しを請うた。
シヴァは両神を許したものの、第三の目の火は消すことができなかったので、これを海に投じた。海に落ちた火から生まれたのがジャランダラである。海神ヴァルナに育てられ、のちにシュクラが師となった。
神話・物語
成長したジャランダラは三界——天界、地上、地底——を征服し、神々を追い払った。妻ヴリンダーはカーラネーミの娘で、その貞節がジャランダラの力の源であった。
シヴァとの戦いにおいて、ヴィシュヌはジャランダラの姿に化けてヴリンダーのもとを訪れ、彼女の貞節を破らせた。これによってジャランダラは力を失い、シヴァは円盤を作ってその首を刎ねた。
欺かれたと知ったヴリンダーは、ヴィシュヌを呪って石にし、自らは火に身を投じた。その灰からトゥラシー(聖なるバジル)が生じたという。ヴィシュヌが石になったのがシャーラグラーマ石であり、トゥラシーとシャーラグラーマは今日もヴィシュヌ崇拝において対で用いられる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
シヴァの怒りの火から生まれ、シヴァに殺されるという円環が、この存在を規定する。神の一部が独立して敵になり、再び神に還る。
妻の貞節が夫の力の源であるという設定も注目される。これを破るために神が夫に化ける——ヒンドゥー神話において最も倫理的に問題含みの場面の一つであり、後代の註釈者を悩ませてきた。
関わる神格・伝承
シヴァの第三の目の火から生まれた。妻はヴリンダー。ヴァルナに育てられ、シュクラを師とした。
パンジャーブ州の都市ジャーランダルは、この名を負うとされる。
文化的足跡
トゥラシー(聖バジル)の起源譚として、この物語はヴィシュヌ派の家庭で語られる。トゥラシーの鉢は今日もヒンドゥーの家に置かれる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。