ディーヴ
ディーヴ · デーヴ · ダエーワ
ペルシアの悪しき超自然の存在で、アヴェスターのダエーワに由来する。サンスクリットのデーヴァ(神)と同語源だが正反対の意味を持つ。『シャー・ナーメ』では白い悪魔がカイ・カーウースを盲目にし、ロスタムに討たれた。
解説
概要
ディーヴ(デーヴとも)は、ペルシアの民間伝承における悪しき超自然の存在である。
アヴェスター語のダエーワに由来する。ゾロアスター教において、ダエーワはアンラ・マンユに属する悪魔である。
神から悪魔へ
インドとの逆転。 サンスクリットの「デーヴァ」は神を意味し、「アスラ」は悪魔を意味する。
イランでは逆に、「ダエーワ」が悪魔であり、「アフラ」(アフラ・マズダー)が最高神である。
共通の語彙、逆の意味。 インド・イラン共通の時代に同じ語彙を用いていた二つの民族が、宗教改革を経て正反対の意味を与えた。
この逆転は、ゾロアスターの改革によるとする説が一般的である。ただしその過程の詳細は議論が続いている。
『シャー・ナーメ』のディーヴ
叙事詩において、ディーヴは巨大で恐ろしい姿の怪物として現れる。
白い悪魔。 マーザンダラーンの白い悪魔(ディーヴェ・セフィード)は、王カイ・カーウースを捕らえて盲目にした。
ロスタムが七つの試練を経てこれを倒し、その肝の血で王の目を癒した。
アクヴァーン。 ディーヴのアクヴァーンは、眠るロスタムを大地ごと持ち上げて空へ運んだ。
「海と山、どちらに落とされたいか」と問われたロスタムは、ディーヴが逆をすると見越して「山」と答えた。海に落とされ、泳いで助かった。
知恵で勝つ。 力で及ばない相手に、逆を言わせることで勝つ。
姿
角を持ち、牙を持ち、身体は黒あるいはまだらである。人語を話し、魔術を使う。
ペルシア細密画において、ディーヴは特徴的な姿で描かれる。腰布のみをつけ、身体に斑模様がある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ロスタムを海に投げるディーヴのアクヴァーンを描いた図である。
関わる神格・伝承
ダエーワが古形。インドのデーヴァと同語源で逆の意味。
文化的足跡
「ディーヴ」の語は、トルコ語、アルメニア語、グルジア語などにも借用され、それぞれの民間伝承における巨人・鬼を指す語になった。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。