フイタカ
フイタカ · シュブチャスガグア · Huitaca
ムイスカの芸術・舞踏・音楽・性の解放の女神。節制を説くボチカに対し歓びを勧め、多くの人が従ったため罰せられて梟あるいは月に変えられた。この対立はキリスト教の道徳観を反映する可能性があり、そのまま史実として扱えない。
解説
概要
フイタカ(シュブチャスガグアとも)は、今日のコロンビアのアンデス高原に栄えたムイスカの人々の宗教に語られる女神である。芸術、舞踏、音楽、妖術、性の解放、そして月の女神とされる。節制と労働を説いた文化英雄ボチカに逆らって人々に歓びを勧め、罰として梟、あるいは月に変えられたと伝えられる。ただし、その記録はすべてスペインの聖職者によるものであり、そこにはキリスト教の道徳観が映り込んでいる可能性がある。
なお本サイトの分類では、南米先住民の体系に含めて扱う。
ボチカに逆らう女神
ボチカが人々に節制と労働を説いたのに対し、フイタカは祭と舞踏と酒を教え、歓びのうちに生きることを勧めた。多くの人々がボチカのもとを離れてフイタカに従ったため、ボチカは彼女を罰した。フイタカは梟に変えられて夜にだけ鳴くようになったとも、月に変えられて夜空に留められたとも伝えられる。
誰が語った物語か
フイタカについての記述を残したのは、フアン・デ・カステリャーノスやペドロ・シモンら、16世紀から17世紀のスペインの聖職者や年代記作者である。節制を説く男神と放縦を勧める女神という対比には、キリスト教の道徳観が映り込んでいる可能性がある。女性が人々を堕落へと誘うという筋立ては、記録者にとって聖書のエバの物語を通じて見慣れたものであった。ムイスカの人々自身がこの二柱の対立をどう理解していたのかは、分かっていない。征服した側の記録である以上、この対立をそのまま史実として受け取ることはできない。
取り戻される女神
20世紀後半以降、コロンビアでは、フイタカは抑えつけられた女性の象徴として読み直されてきた。記録のなかで退けられた女神が、現代になって新たな意味を与えられ、音楽や舞踊、文学の題材となっている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、フイタカが変えられたとされる鳥、メンフクロウである。
関わる神格・伝承
ボチカに罰せられた。月の女神チアと同一視されることがある。
ムイスカの芸術家と職人の守り手ネンカタコアとは、祭の領域を分け合う。
文化的足跡
ボゴタには、フイタカの名を冠した文化施設や芸術団体がいくつもある。
なおコロンビア先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。