ホーンド・サーペント
角のある蛇 · ウクテナ · 縛り蛇
北米先住民の水底の蛇で、額の水晶が占いの力を持つとされた。雷鳥と永遠に戦い、その戦いが嵐となる。ミシシッピ文化の儀礼美術に繰り返し描かれ、メソアメリカの羽毛の蛇との関係が論じられる。
解説
概要
ホーンド・サーペント(角のある蛇)は、北米先住民をはじめ、ヨーロッパや近東の神話にも現れる。細部は文化によって異なるが、多くの物語がこの存在を水、雨、稲妻、雷、そして再生に結びつける。北米の先史時代における南東部儀礼複合の主要な構成要素であった。
神話・物語
角のある蛇は、北米の多くの先住民文化——とりわけ南東部森林地帯と五大湖——の口承に現れる。
マスコギー・クリーク。 角のある蛇と縛り蛇(エスタクヴナイヴ)の伝承がある。両者は同じ生き物とも別とも解されるが、角のある蛇のほうが大きい。マスコギーにとって角のある蛇は水中の蛇で、虹色の水晶のような鱗に覆われ、額に一つの大きな水晶を持つ。鱗も水晶も、占いの力を持つものとして珍重された。角(チット・ガビー)は薬に用いられた。
チェロキー。 ウクテナは木ほどの太さの蛇で、鹿の角を持ち、稲妻のように輝く鱗に覆われる。額の水晶ウラスリ(ウルンスティ)を得た者は、未来を見、獲物を見つけ、病を癒すことができる。ただし血を与え続けねばならず、怠れば持ち主の家族の命を奪う。強い力を持つ物が、その所有者を危うくするという構造である。
ウクテナを見た者はその目に魅入られ、逃げようとすると蛇のほうへ走ってしまうという。唯一の弱点は頭から七番目の斑点の下——心臓の位置——であり、シャワノ(ショーニー)の呪術師がこれを射て倒したと伝えられる。ジェイムズ・ムーニー『チェロキーの神話』(1900年)に記録されている。
五大湖。 水底の豹と並ぶ水の存在であり、雷鳥と敵対する。サンダーバードが空の力、角のある蛇が水底の力を表し、両者の戦いが嵐である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カサス・グランデス(ニューメキシコまたはチワワ、1280〜1450年頃)の土器である。二匹の羽毛と角を持つ蛇が描かれている(シカゴ美術館蔵)。
南東部儀礼複合——ミシシッピ文化の宗教美術——において、角のある蛇は貝製の装飾板や土器に繰り返し描かれた。翼と角を持つ蛇という造形は、メソアメリカのケツァルコアトルとの関係が論じられてきた。
この存在を規定するのは、水底と空の対立である。角のある蛇は水底の力であり、雷鳥と永遠に戦う。
関わる伝承
雷鳥(サンダーバード)と敵対する。水底の豹と並ぶ水の存在である。
ヨーロッパの角のある蛇——ケルトのケルヌンノスに伴う羊頭の蛇——や近東の例と、直接の系統関係はない。角のある蛇という造形が、各地で独立に生じたとみられる。
文化的足跡
北米の岩絵に角のある蛇は数多く描かれ、先住民の聖地の徴となっている。
なお北米先住民の諸伝統は今日も継承されている生きた信仰であり、物語の多くは特定の民族・氏族に属するものとして語られる。