ハ
ハ · Ha · ḥꜣ
エジプト西方砂漠とオアシスの神で、砂漠の丘の象形文字を頭に載せた男として描かれる。リビュア人の侵入からエジプトを守るとされ、セトと結びつく。西方が死者の国であることから冥界とも関わる。
解説
概要
ハ(ḥꜣ / Ha)は、ナイルの西に広がる砂漠と山地、そのオアシスを司る古代エジプトの神である。西から来る外敵、とりわけリビュア系の人々の侵入からエジプトと王を守ると考えられ、下エジプト第7ノモスの主神でもあった。
神話・物語
起源ははっきりしない。先王朝末のスコルピオン王の棍棒頭に刻まれた神々の旗竿の行列には、山地の記号を載せたものがあり、これをハの早い姿と見る説がある。ウナス王のピラミッドの『ピラミッド・テキスト』では死んだ王を守る神として現れるが、古王国の記録はわずかで、中王国に入ってからふたたびよく現れる。この頃に西方砂漠の古い神アシュの位置を引き継いだとする見方もあるが、アシュの名はその後も記録に残る。
第一中間期以降、ハは西の境を守る神として、東の辺境の神ソプドゥ、南のヌビアの神デドゥンと並べられた。国土の四方を神々が守るという観念のなかで、ハは西を受け持つ。新王国には「ハの祭」が増水季第1月の10日に祝われたことが記録されている。
エジプトでは西方は死者の国でもあり、砂漠の神であるハは冥界と結びつけて語られることもある。
図像と象徴
腰布をつけた男の姿で、頭上に三つの峰を並べた「山地・異国」を表す文字を載せる。この文字は、神の名や領分を頭上に置いて誰であるかを示すエジプトの図像の作法に従ったものである。中王国には玉座に座るミイラの姿、新王国以降は隼の姿でも表され、ナイフと弓を手にする例もある。
系譜と関係
砂漠と異国の神としてセトやアシュと重なる。西方そのものを体現する女神イメンテトとは、西という方角を共有する。古王国以来、ミンと並ぶ豊穣の神としても祀られた。
文化的足跡
2000年代に記載された獣脚類恐竜ハグリフス(Hagryphus、「ハのグリフィン」)は、この神の名にちなむ。化石が見つかった北米ユタ州の砂漠を、西方砂漠の神に重ねた命名である。