エタナ
エタナ · Etana
キシュ第一王朝の王で、子を得るため餓死しかけた鷲を救い、その背に乗って出産の草を求めて天へ昇った。上昇するにつれ大地が小さく見える描写は世界文学最古の高所からの眺望の一つ。結末は粘土板が破損して不明。
解説
概要
エタナ(Etana)は、シュメール王名表によれば、キシュ第一王朝の十三代目の王である。マシュダの子アルウィウムの後継者として、キシュの王に挙げられる。王名表はエタナを「天に昇り、すべての外国を統一した羊飼い」と呼び、千五百年(一部の写本では六百三十五年)統治したのち、子バリフに継がれたと記す。
王名表の初期の王たちは通常、同時代の初期王朝期の文書に言及されないかぎり歴史上の人物とはみなされないが、エタナはそれらの一人である。
エタナ神話
バビロニアの伝説によれば、エタナは子を切に望んでいた。ある日、飢えて死にかけていた鷲を救うと、その鷲がエタナを天へ運んで、「出産の草」を探させた。これが、子バリフの誕生につながったという。
より詳しい形の伝説では、一本の木の根もとに蛇が、梢に鷲が住んでいた。二匹は、互いの子を傷つけないことを、太陽の神シャマシュの前で誓い合った。ところが鷲は誓いを破り、蛇の子を食べてしまった。蛇がシャマシュに訴えると、神は助言を与えた。蛇はそれに従って野牛の死骸のなかに隠れ、やって来た鷲を捕らえて翼をむしり、穴に投げ込んだ。エタナはシャマシュに子を授けてくれるよう祈り、シャマシュは、穴の鷲のもとへ行くよう告げた。エタナが鷲を救うと、鷲はその礼にエタナを背に乗せて、天へ昇った。
鷲はエタナを乗せて昇りながら、一里ごとに「見よ、大地はどう見えるか」と尋ねた。エタナは、大地は丘のよう、海は水路のようだと答え、さらに昇ると、大地は畑のよう、海はパン籠のようだと答え、さらに昇ると、大地は畝のよう、海は水汲みの桶のようだと答えた。そしてついに、大地は見えなくなった。イシュタルの天にたどり着いたところで粘土板が欠けており、物語の結末は分からない。一部の版では、エタナは恐れて落ちていったとされる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エタナ叙事詩の断片である(アッカド語、バビロン第一王朝、前1895〜1595年頃、モルガン図書館・美術館蔵)。
鷲に乗って天へ昇るという主題は、円筒印章に繰り返し描かれた。地上の羊と羊飼いを見下ろしながら、鷲に乗る人物の図である。
上昇するにつれて大地が小さく見えるという描写は、世界文学で最も早い高所からの眺望の記述の一つである。
関わる神格・伝承
シャマシュに祈った。鷲に乗って天へ昇った。
キシュの王として、シュメール王名表に記される。神話と王名表が交差する数少ない人物である。
文化的足跡
エタナの飛翔は、ギリシアのイーカロス、ペルシアのカイ・カーウース——鷲に運ばせて天へ昇ろうとした王——と比較される。人が鳥によって天へ昇るという主題の、最も古い記録である。