ヴェルンド
ヴェルンド · ヴォルンド · ウェーランド
ゲルマン伝説の名匠鍛冶。白鳥の乙女を妻としたが、王に腱を切られて島に囚われ鍛冶を強いられた。王の子を殺して頭蓋を杯とし、娘を犯し、自作の翼で飛び去った。フランクスの小箱に異教の復讐譚として刻まれる。
解説
概要
鍛冶師ヴェルンド(古英語ウェーランド、古ノルド語ヴォルンド)は、北欧とゲルマンの神話における伝説上の名匠である。その技と狡知、そして囚われと復讐をめぐる物語で名高い。
なお本サイトの分類では、ゲルマン諸民族に共有される伝説の人物として北欧の体系に含めて扱う。
神話・物語
その物語は、古ノルド語の資料『ヴェルンドの歌』(『古エッダ』の詩)と『シズレクのサガ』において最も明瞭に語られる。
白鳥の乙女。 ヴェルンドと二人の兄弟は、水浴する白鳥の乙女たちの羽衣を隠して妻とした。九年ののち、乙女たちは去った。兄弟は妻を追ったが、ヴェルンドは留まって鍛冶を続けた。
囚われ。 スウェーデン王ニーズズはヴェルンドを捕らえ、その技を独占するため足の腱を切って島に閉じ込め、鍛冶をさせた。
復讐。 ヴェルンドは王の二人の子を誘い出して殺し、その頭蓋を銀で装って杯とし、眼を宝石に、歯を胸飾りにして王とその妻に贈った。さらに王の娘ボズヴィルドを犯して身ごもらせた。
そして自ら作った翼で飛び去り、王にすべてを告げて去った。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エッダの写本挿絵に描かれたヴェルンドである。
フランクスの小箱。 8世紀のアングロサクソンの鯨骨製の箱(大英博物館蔵)の正面左に、ヴェルンドの物語が刻まれている。鍛冶場で杯を差し出すヴェルンド、足元に首のない死体、右に鳥を捕らえる人物。
同じ面の右にはキリスト降誕が刻まれる。異教の復讐譚とキリスト教の救済が、一つの箱に並置されている。
ウェイランズ・スミシー。 イングランド・オクスフォードシャーの新石器時代の長い塚は、「ウェイランドの鍛冶場」と呼ばれる。馬を置いて銀貨を残せば、翌朝には蹄鉄が打たれているという伝承がある。
関わる神格・伝承
兄弟はエギルとスラグフィズ。妻は白鳥の乙女。子はウィディア(ボズヴィルドとの子)。
『ベーオウルフ』にその名が現れ、主人公の鎧が「ウェーランドの作」とされる。名匠の名が、優れた武具を示す標章として用いられた。
文化的足跡
トールキンをはじめ、近代のファンタジー文学において、ヴェルンドは名匠の原型として繰り返し引かれる。イングランドの地名にもその名が残る。