ヴェルンド
ヴォルンド · ウェーランド · ウェイランド
ゲルマン伝説の名匠の鍛冶。白鳥の乙女を妻としたが、王ニーズズに足の腱を切られて島に囚われ、鍛冶を強いられた。王の子らを殺して頭蓋を杯とし、王女を犯し、自作の翼で飛び去った。フランクスの小箱に刻まれ、『ベーオウルフ』にも名が見える。
解説
概要
鍛冶師ヴェルンド(古英語ウェーランド、古ノルド語ヴォルンド)は、ゲルマンの諸民族に伝わる伝説の名匠で、囚われと復讐の物語で知られる。ゲルマンに共有される伝説の人物として、北欧神話の体系に含めて扱う。
神話・物語
ヴェルンドの物語は、古ノルド語の『ヴェルンドの歌』(『古エッダ』の詩)と『シズレクのサガ』に最もはっきりと語られている。ヴェルンドと二人の兄弟は、水浴びをしていた白鳥の乙女たちの羽衣を隠し、乙女たちを妻とした。九年ののち、乙女たちは去っていった。兄弟は妻を追って旅立ったが、ヴェルンドはその地に留まって鍛冶を続けた。
スウェーデンの王ニーズズはヴェルンドを捕らえ、その技を独り占めにするため、足の腱を切って島に閉じ込め、鍛冶をさせた。ヴェルンドは復讐を企てた。王の二人の息子を誘い出して殺し、その頭蓋骨を銀で飾って杯とし、目を宝石に、歯を胸飾りにして、王とその妻に贈った。さらに王の娘ボズヴィルドを犯して身ごもらせた。そして自ら作った翼で飛び立ち、王にすべてを告げて去っていった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、フレードリク・サンデル版『エッダ』(1893年)にカール・フレードリク・フォン・サルツァが描いたヴェルンドの挿絵である。8世紀のアングロサクソンの鯨の骨でできた箱「フランクスの小箱」(大英博物館蔵)の正面の左側には、ヴェルンドの物語が刻まれている。鍛冶場で杯を差し出すヴェルンドの足もとには首のない遺体があり、右側には鳥を捕らえる人物がいる。同じ面の右側には東方の三博士の礼拝が刻まれ、異教の物語とキリスト教の物語が一つの面に並んでいる。
イングランドのオックスフォードシャーにある新石器時代の長い塚は、「ウェイランドの鍛冶場」と呼ばれる。馬を置き、銀貨を残しておけば、翌朝には蹄鉄が打たれているという伝承がある。
系譜と関係
兄弟はエギルとスラグフィズ。妻は白鳥の乙女。子はウィディア(ボズヴィルドとの子)。
『ベーオウルフ』にその名が現れ、主人公の鎧が「ウェーランドの作」とされる。
文化的足跡
ラドヤード・キプリングの『プークが丘の妖精パック』(1906年)には、神から鍛冶へと落ちぶれたウェーランドが「ウェーランドの剣」を打つ話がある。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。