龍亀
龍亀 · 贔屓 · 霸下
龍の頭と亀の身体を持つ中国の伝説の生き物。龍の九匹の子の一つ贔屓と同一視され、重い物を背負うことを好むため石碑の台座(亀趺)として彫られた。「贔屓」の名は、力をこめて奮い立つさまを表す漢語による。風水では富と守護を招く。
解説
概要
龍亀(ロングイ)は、龍の頭と亀の身体を持つ、中国の伝説上の生き物である。龍の九匹の子のうち、重いものを背負うことを好む贔屓(ひき)としばしば同一視され、石碑の台座として彫られてきた。風水では、富と長寿と守りを招く縁起物とされる。日本語の「ひいき」をこの神獣の名に由来すると説く解説も多いが、語の歴史は逆の順序をたどる(後述)。
なお本サイトの分類では、中国神話・道教の体系に含めて扱う。
龍の子、贔屓
龍には九匹の子があり、それぞれ異なる姿と性質を持つとされる。そのうち贔屓は、重いものを背負うことを好む。霸下とも呼ばれ、龍亀と同じものとみなされることが多い。「贔屓」はもともと、力をこめて奮い立つさまを表す漢語で、後漢の張衡『西京賦』には、河の神・巨霊が力を振るって山を押し分けるさまを「巨霊贔屓」と描く用例がある。竜の子の名は、重荷を負って力むというこの語の意味から付けられたとみられる。日本語の「ひいき」も、この漢語が「力を添えて引き立てる」意に転じたもので、神獣の名から生まれた語ではない。九匹の子の一覧は明代の文献に現れ、名と順序は資料によって異なる。
碑を背負う亀
中国の石碑の多くは、亀の形をした台座の上に立てられている。これを「亀趺」という。文字を刻んだ碑を亀が背負い、記録を支えているのである。この形式は朝鮮半島や日本、ベトナムにも伝わり、ハノイの文廟に並ぶ、科挙の合格者の名を刻んだ進士題名碑がとくに名高い。
玄武とは別のもの
北方を守る亀と蛇が一体となった神獣玄武は、龍亀とは別の存在である。ただし図像の上では似ており、混同されることがある。
風水の縁起物
今日、龍亀の置物は風水の縁起物として広く売られている。頭を家の外へ向けて置けば、悪い気を防ぐとされる。背に銅銭を載せた像は、商売繁盛を願って商店に置かれる。碑を背負ってきた獣が、暮らしを支える縁起物になったのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、龍亀の像である。
関わる伝承
龍の九子の贔屓と同一視され、玄武とは区別される。四龍や龍馬とともに龍の系列をなす。
文化的足跡
亀趺の石碑は、中国、朝鮮、日本、ベトナムに数多く残っている。
なお道教と中国の民間信仰は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。