道祖神
どうそじん · どうそしん · 塞の神
村境や辻に立って外来の疫病や悪霊を防ぐ路傍の神。中国の道祖と日本の塞の神が融合し、猿田彦と天宇受売命の男女一対の像に習合した。甲信越に多く、旅と縁結びの神として『奥の細道』の序文で知られる。
解説
概要
道祖神(どうそじん、どうそしん)は、村境、峠などの路傍にあって外来の疫病や悪霊を防ぐ神である。のちには縁結びの神、旅行安全の神、子供と親しい神とされ、男根形の自然石、石に文字や像を刻んだものなどがある。
集落の境や村の中心、村内と村外の境界や道の辻、三叉路などに主に石碑や石像の形態で祀られる神で、村の守り神、子孫繁栄、近世では旅や交通安全の神として信仰されている。
起源
中国では紀元前から祀られていた道の神「道祖」と、日本古来の邪悪をさえぎる「みちの神」が融合したものといわれる。
神名としての初見史料は10世紀半ばに編纂された『和名類聚抄』で、そこでは「さへのかみ(塞の神)」という音があてられ、外部からの侵入者を防ぐ神であると考えられている。『古事記』において、イザナギが黄泉から逃げ帰るとき、黄泉比良坂を塞いだ千引岩を道反之大神といい、追ってきたイザナミを防いだ。この岩、およびイザナギが投げ捨てた杖から生まれた衝立船戸神が、塞の神の原型とされる。
道祖神が数多く作られるようになったのは18世紀から19世紀で、新田開発や水路整備が活発に行われていた時期である。
分布と形態
全国的に広い分布をしているが、出雲神話の故郷である島根県には少ない。甲信越地方や関東地方に多く、とりわけ道祖神が多いとされる長野県安曇野市では、文字碑と双体像に大別され、庚申塔・二十三夜塔とともに祀られている場合が多い。
双体像は、男女一対の神が並ぶ、あるいは抱擁する姿で表される。猿田彦神および彼の妻といわれる天宇受売命と男女一対の形で習合したものと解される。
各地でさまざまな呼び名が存在する。道陸神、賽の神、障の神、幸の神など。秋田県湯沢市付近では「仁王さん」の名で呼ばれる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、秋田県湯沢市の鹿島様である。藁で作られた巨大な道祖神で、村境に立つ。
境界に立つという位置が、この神を規定する。村の内と外、此界と異界の境に置かれ、外からの災厄を防ぐ。同時に、旅立つ者を送り出す。
男根形の石や男女一対の像は、生殖と豊穣を境界に置くことで、共同体の再生産を守るという観念を示す。
関わる神格・伝承
塞の神、岐の神と同一。猿田彦神と習合。地蔵信仰とも習合。
小正月のどんど焼き(左義長)は、道祖神の祭として行われる地方が多い。
文化的足跡
松尾芭蕉『奥の細道』の序文「道祖神の招きにあひて取るもの手につかず」により、旅の神としての道祖神が広く知られた。安曇野の道祖神は観光資源としても知られる。
なお神道と日本の民間信仰は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。