キシン
キシン · シシン · キセン
死と地震を司るマヤの神で、研究者は神Aと呼ぶ。名は「悪臭」を意味し、腐敗する死体の臭いが神の名になっている。骸骨の姿で死の目玉を首飾りにする。ラカンドンの伝承では地下で死者の魂を焼き、柱を揺すって地震を起こす。
解説
概要
キシン(シシン、キセンとも)は、死と地震のマヤの神である。マヤ文化において最も重要な死の神であり、研究者は神Aと呼ぶ。
ユカタンのマヤにとって、彼はフン・カメーとヴクブ・カメーであった。ミクトランテクトリとの類似も指摘される。
名
キシンの名はおそらく「悪臭」を意味する。ユカテコ・マヤ語の語根「キス」(放屁、悪臭)に由来する。
腐敗する死体の臭いが、そのまま神の名になっている。
多くの名で呼ばれる。ア・プチ、ユム・キミル、フンハウ、クム・ハウなどである。今日のマヤはユム・キムあるいはユム・キミルと呼ぶ。
図像
骸骨の姿で描かれる。腹部が膨れ、あるいは肋骨が露わになっている。死の目玉——眼窩から垂れる目——を首飾りにする。
鈴を身につけることがある。骨と鈴の音が、死者の接近を告げる。
『ポポル・ヴフ』のシバルバーの主フン・カメー(一の死)とヴクブ・カメー(七の死)は、この神の別名あるいは対応する存在とされる。
ラカンドンの伝承
20世紀のラカンドン・マヤの民族誌において、キシンは地下に住み、死者の魂を焼く神として語られる。
死者は焼かれたのち凍らされ、これを繰り返される。焼き終えると、魂は犬あるいは蝶になる。
地震はキシンが世界を支える柱を揺すって起こすとされる。死と地震が同じ神に配されるのは、地下という共通の領域による。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、トウモロコシの神とイツァムナーを描いた絵文書の図である。
腐敗と悪臭が神の名になるという点が、この神を規定する。死は美化されず、その物理的な現れがそのまま神格化されている。
関わる神格・伝承
ア・プチと同一あるいは近縁。シバルバーの主。ミクトランテクトリと比較される。
文化的足跡
ラカンドンの伝承は、20世紀まで残ったマヤの宗教の実態を伝える貴重な資料である。