碧霞元君
へきかげんくん · 泰山老母 · 泰山娘娘
泰山信仰で最も人気のある女神で、華北では西王母を凌ぐ信仰を集める。泰山の主神東岳大帝の娘とされ、父が死者を司るのに対し娘は子授けと安産など生きた人の願いを聞く。宋の真宗の封禅が信仰の起点。
解説
概要
碧霞元君(へきかげんくん)は、中国の女神であり、泰山信仰でもっとも人気がある女神である。
別名は天仙聖母碧霞元君、泰山老母、泰山玉女、泰山娘娘、天仙娘娘など。人々の出世、結婚、豊作など全般にわたる願いを司る。
位置
特に華北地方では、西王母を凌ぎ、女神としてもっとも信仰を集めている。
李諤の『瑶池記』によれば、彼女は黄帝が遣わした七人の仙女の一人・玉女である。
そのルーツは、泰山の守護神・東岳大帝の娘である玉女大仙、あるいは後漢の明帝の時代の石守道という人の娘・玉葉との二説が有力である。
泰山信仰
泰山は五岳の筆頭であり、歴代の皇帝が封禅の儀を行った聖山である。同時に、死者の魂が集まる山ともされた。
東岳大帝が泰山の主神として死者を司るのに対し、その娘とされる碧霞元君は、生きた人の願い——とりわけ子授けと安産——を聞く神として、民間の信仰を集めた。
父が死を、娘が生を司るという分業である。
宋の真宗が泰山で封禅を行った際、玉女の像を発見して祠を建てたことが、この女神の信仰の起点とされる。明清期に華北全域へ広まった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、碧霞元君の像である。
冠を戴き、鳳凰の装飾をつけた女神の姿で表される。娘娘(にゃんにゃん)——母なる女神への呼びかけ——の名で親しまれる。
女神の信仰が男神を凌ぐという点が、この神格を規定する。国家祭祀の対象である東岳大帝より、その娘のほうが民衆に祀られた。
関わる神格・伝承
東岳大帝の娘とされる。泰山の女神。媽祖と並ぶ中華圏の主要な女神である。
文化的足跡
泰山山頂の碧霞祠は、今日も参詣者を集める。北京の妙峰山をはじめ、華北各地に碧霞元君を祀る廟(娘娘廟)がある。
なお中国の民間信仰と道教は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。