媽祖
天上聖母 · 天后 · 天妃
中国沿海部の航海守護の女神。宋代、福建の女性・林黙娘が神格化されたと伝えられ、天上聖母・天后として、船人や漁民の守り神として広く崇拝される。
解説
概要
媽祖(まそ、Māzǔ)は、中国の沿海部で広く崇拝される航海守護の女神である。天上聖母(てんじょうせいぼ)・天后(てんこう)とも尊ばれ、海に生きる船人・漁民の守り神として、福建から広東・台湾、さらに東南アジアの華人社会にまで信仰が広がった。荒れる海に現れて船を導き、遭難を救うと伝えられ、水神・海神の性格をもつ。今日なお篤い信仰を集める、生きた民間信仰の女神である。
由来と物語
媽祖は、実在の女性が神格化されたと伝えられる点に特色がある。宋代、福建の湄洲島(びしゅうとう)に生まれた林黙娘(りんもくじょう)という娘が、その原型とされる。生まれてから泣かなかったので「黙」と名づけられたとも、水練に長け天候を読み、海難の船を幾度も救ったとも語られる。若くして世を去り(一説に二十八歳)、のち海に現れて人々を守る神となったと伝えられた。
その霊験は朝廷にも認められ、歴代の王朝は「夫人」「妃」「天妃」と尊号を重ね、清の康熙帝の時代には「天后」の号が贈られた。海運と交易の発展にともなって信仰は沿海一帯へ広がり、媽祖を祀る廟が港ごとに営まれた。媽祖をめぐる信仰と儀礼は、今日では人類の無形文化遺産にも数えられている。
図像と象徴
媽祖は、皇后の装いをまとった女神として描かれる。平天冠(へいてんかん)に珠簾(しゅれん=玉の簾)を垂らし、笏(しゃく)を執って端座する、天后にふさわしい荘厳な神像が典型である。その顔は穏やかに、あるいは霊威を示して朱に彩られることもある。両脇には、遠くを見通す千里眼(せんりがん)と、風にのる音を聴く順風耳(じゅんぷうじ)の二神将を従える姿がよく知られる。祭礼では、神像を輿(こし)に乗せて巡行する盛大な行事が営まれる。
系譜と関係
媽祖は、天界の秩序のなかでは海と沿岸を守る神として位置づけられ、配下に千里眼・順風耳の二将を従える。航海の安全を願う人々の切実な祈りが、この女神への信仰を支えてきた。
文化的足跡
媽祖信仰は、中国沿海部から台湾・東南アジアの華人社会に深く根づき、湄洲島の祖廟をはじめ各地の天后宮で盛大な祭礼が続けられている。海の女神という主題は、地域の歴史や文学、現代の創作にもたびたび取り上げられている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。