媽祖
天上聖母 · 天后 · 天妃
中国沿海部の航海守護の女神で、天上聖母・天后とも呼ばれる。960年に福建の湄洲島に生まれた林黙娘が神格化されたとされ、宋から清まで尊号が重ねられ、1683年に天后となった。千里眼と順風耳を従える。台湾や東南アジアの華人社会にも広く祀られる。
解説
概要
媽祖(まそ、Māzǔ)は、中国の沿海部で広く崇拝される航海守護の女神である。天上聖母・天后とも尊ばれ、船人や漁民の守り神として、福建から広東・台湾、さらに東南アジアの華人社会にまで信仰が広がった。宋代の福建に実在した女性、林黙娘が神格化されたと伝えられ、海の神の性格をもつ。
神話・物語
伝えによれば、林黙娘は960年に福建の湄洲島に生まれた。生まれてからひと月のあいだ泣かなかったので、「黙(もの言わぬ)」と名づけられたという。父は林願、母は王氏である。
最もよく知られる話では、機を織っていた黙娘は意識を失い、台風の海で溺れかけた父や兄たちを、魂となって救っていた。母に揺り起こされたため、兄の一人を海に落としてしまったという。父を救えなかったとする異伝もある。987年に二十七、八歳で世を去り、のち海に現れて人々を守る神となった。
千里眼と順風耳は、もと黙娘に恋した魔物で、彼女に打ち負かされたのち、配下の将となったと語られる。
信仰
その霊験は朝廷にも認められ、尊号が重ねられた。南宋の1156年に「霊恵夫人」、1192年に「霊恵妃」、元の1281年に「護国明著天妃」、清の1683年に「天后」の号が贈られた。明の鄭和は、航海の守護を媽祖に感謝し、1409年に新たな尊号が贈られるきっかけとなった。海運と交易の発展にともなって信仰は沿海一帯へ広がり、港ごとに媽祖を祀る廟が営まれた。2009年には「媽祖信俗」がユネスコの無形文化遺産に登録された。
図像と象徴
媽祖は、皇后の装いをまとった女神として表される。玉の簾を前後に垂らした平らな冠をいただき、笏を執って端座する姿が典型である。両脇には、遠くを見通す千里眼と、風に乗る音を聴く順風耳の二将を従える。千里眼は赤い体に二本の角、順風耳は緑の体に一本の角で表され、媽祖廟の門神ともなる。祭礼では、神像を輿に乗せて巡行する。
系譜と関係
父は林願、母は王氏。配下に千里眼・順風耳の二将を従える。広東の民間信仰では、媽祖や洪聖とともに、出産を守る金花娘娘が祀られる。
文化的足跡
湄洲島は媽祖信仰の巡礼の中心であり、台湾をはじめ各地の天后宮で盛大な祭礼が続けられている。
なお道教と中国の民間信仰は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。