ビージャンとマニージェ
ビージャン · マニージェ · Bijan and Manijeh
『シャー・ナーメ』の恋の物語。イランの騎士ビージャンが敵国トゥーラーンの王女マニージェと恋に落ち、穴に落とされた。王女は宮廷を追われて乞食となり、隙間から食物を落として恋人を生かした。ロスタムが商人に扮して救出した。
解説
概要
ビージャンとマニージェ(ビジャンとマニジェとも)は、フェルドウスィーの『シャー・ナーメ』における恋の物語である。
ビージャンは、イランの王カイ・ホスロウの治世における名高いイランの騎士ギーヴと、ロスタムの女傑の娘バーヌー・ゴシャスプの子であった。
ビージャンは、イラン最大の敵であるトゥーラーンの王アフラースィヤーブの娘マニージェに恋する。その苦難とマニージェの献身が、この物語の主題である。
物語
アルマーン人の土地が猪に荒らされ、ビージャンがその退治に向かった。帰り道、トゥーラーンとの境で、祭に集う娘たちを見かけた。そのなかにマニージェがいた。二人はひと目で恋に落ち、三日をともに過ごした。マニージェはビージャンに薬を飲ませて眠らせ、トゥーラーンの宮廷へと運び込んだ。
これを知った王アフラースィヤーブは激怒し、ビージャンを殺そうとしたが、宰相ピーラーンのとりなしによって、深い穴に落として巨石で蓋をするにとどめた。マニージェは宮廷を追われて物乞いとなった。それでも穴のそばを離れず、物乞いをして得た食べ物を石の隙間から落として、恋人を生かし続けた。王女が物乞いとなって恋人を養うこの場面が、物語の中心である。
やがて王カイ・ホスロウが、世界を映し出す杯(ジャーム・エ・ギーティー・ヌマー)でビージャンの居場所を見つけた。ロスタムは商人に扮してトゥーラーンへ入り、マニージェを通じてビージャンと連絡をとると、巨石を持ち上げて二人を救い出した。
語りの枠
『シャー・ナーメ』のなかで、この物語には珍しい枠がついている。フェルドウスィーは、眠れない夜に、妻がこの物語を語り聞かせてくれたと記しているのである。詩人の妻が、語り手として登場する。献身する女性の物語が、女性の語りとして枠づけられているのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、マニージェを訪ねるビージャンを描いた写本の葉である(ロサンゼルス郡立美術館蔵)。
関わる神格・伝承
ビージャンの父はギーヴ、母はバーヌー・ゴシャスプ。マニージェの父はアフラースィヤーブ。ロスタムが救出した。
文化的足跡
ビージャンとマニージェの物語は、ペルシア細密画の主要な主題である。穴に落ちたビージャンと、傍らのマニージェの場面が繰り返し描かれた。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。