バアルシャミン
バアル・シャメム · バアル・シャマイム · Baalshamin
「天の主」を意味する北西セムの神の称号で、バアル、ハダド、ゼウス、ユーピテルに適用された。パルミラの主要な神であり、その神殿は最もよく保存された建築の一つであったが、2015年にイスラーム国により爆破された。
解説
概要
バアルシャミン(アラム語 bʿl šmyn、フェニキア語でバアル・シャメム)は「天の主」を意味する名で、北西セムの各地で最も高い天の神に与えられた。固有の神であると同時に、時代や土地によって異なる神々を指しうる称号でもある。記録は前10世紀のビュブロス王イェヒミルクの碑文にさかのぼり、前1千年紀にはフェニキアとアラムの諸国で広く祀られた。ローマ時代にはシリアの隊商都市パルミラの主要な神の一柱となった。
神話・物語
バアルシャミンについてまとまった物語は伝わらない。碑文では、王を立て守る天の神として呼びかけられる。前8世紀のハマトの王ザックルの碑文は、包囲された王の祈りにバアルシャミンが預言者を通して応え、救いを約束したと記す。
パルミラでは、農耕と雨を司る天の神として、また「世々の主」として崇められ、131年にはその神殿が現在知られる形に建てられた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ルーヴル美術館蔵の「パルミラの三柱神」の浮彫で、中央のバアルシャミンの左右に、月の神アグリボルと太陽の神マラクベルが立つ。三柱はいずれもローマ風の甲冑をまとい、月神は肩に三日月、太陽神は光輪を負う。パルミラでは、天の神が月と太陽を従える三柱の組として表された。鷲もこの神の徴とされる。
系譜と関係
「天の主」は固有の名というより称号の性格が強く、バアルや嵐の神ハダドにも当てられた。ギリシア語の碑文ではゼウス(ゼウス・ヒュプシストス、ゼウス・ケラウニオスなど)に、ローマ時代にはユーピテルに当てられている。
前167年、セレウコス朝のアンティオコス4世はエルサレムの神殿にゼウス・オリュンピオスの祭壇を設けた。『ダニエル書』の「荒らす憎むべきもの」(シックーツ・ショーメーム)は、このバアル・シャマイムの名の音をもじって貶めた言葉だとする説がある。
文化的足跡
パルミラのバアルシャミン神殿は、市内で最もよく保存された建物の一つであったが、2015年8月に過激派組織「イスラーム国」によって爆破された。パルミラは1980年にユネスコの世界遺産に登録されており、神殿の破壊は戦争と文化財をめぐる国際的な議論の焦点となった。