バアラト・ゲバル
バアラト・ゲバル · バアルティス · Baalat Gebal
「ビュブロスの女主」を意味する交易都市ビュブロスの守護女神。エジプト人はこれを「ビュブロスのハトホル」と呼び、牛の角と日輪を戴く姿で描いた。フェニキアの女神がエジプトの図像で表される、交易による神の姿の伝播の例。
解説
概要
バアラト・ゲバル(字義どおり「ビュブロスの女主」)は、バアルティスとしても知られ、ビュブロスの都市の守護女神であった。
かつてはその名が単なる添え名であると想定されることが多かったが、現在の研究者は、これが固有名であり、対応する都市との密接な結びつきを強調するためのものと考えている。
なお本サイトの分類では、フェニキアの体系に含めて扱う。
ビュブロス
ビュブロス(現在のレバノンのジュベイル)は、地中海東岸最古の都市の一つである。
杉の交易。 レバノン杉をエジプトへ輸出し、パピルスを輸入した。
「聖書」の語源。 ギリシア語の「ビブロス」(パピルスの巻物)は、この都市の名に由来する。そこから「バイブル」の語が生じた。
都市の女主。 バアラト・ゲバルは、この交易都市の守護神である。
エジプトとの関係
ビュブロスとエジプトの関係は、前三千年紀に遡る。
ハトホルとの同一視。 エジプト人は、バアラト・ゲバルを「ビュブロスのハトホル」と呼んだ。
牛の角と日輪。 その図像はハトホルの様式を借り、牛の角のあいだに日輪を戴く姿で表される。
フェニキアの女神が、エジプトの図像で描かれる。 交易が、神の姿を運ぶ。
オシリス神話
プルータルコス『イシスとオシリスについて』は、イシスがビュブロスを訪れる物語を伝える。
箱が流れ着く。 オシリスの遺体を納めた箱が、ビュブロスの岸に流れ着き、木がこれを包んで育った。
柱になる。 王がその木を切って宮殿の柱とした。イシスが訪れ、これを譲り受けた。
エジプトの神話にフェニキアの都市が現れる。 両者の長い関係が、神話に反映されている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
ビュブロスの守護女神。ハトホルと同一視される。アスタルトと同一視されることもある。
文化的足跡
ビュブロスの遺跡は、ユネスコの世界遺産に登録されている。