アシュナン
アシュナン · エジナ · Ashnan
穀物を擬人化したメソポタミアの女神。神々に食物がなかったとき羊の神ラハルとともに創られて地上に降ろされた。『羊と穀物の論争』では羊と優劣を論じ、エンリルとエンキが穀物に軍配を上げた。
解説
概要
アシュナン(Ashnan)あるいはエジナ(Ezina。いずれの読みも互換的に用いられる)は、穀物の擬人化とみなされたメソポタミアの女神である。
エジナ・クスとも呼ばれえたため、女神クスは当初その添え名であり、のちに独立した存在に発展したという説が提案されている。
ウルク期にはすでに崇拝され、前三千年紀の多くのメソポタミアの都市の文書に現れる。『羊と穀物の論争』のような論争詩を含む、メソポタミア文学のさまざまな作品からも知られる。
羊と穀物の論争
『羊と穀物の論争』(あるいは『ラハルとアシュナンの論争』)は、シュメールの論争詩の一つである。
天と地の神々が生まれたのち、アヌンナキの神々には食べるものも着るものもなかった。そこで神々はアシュナン(穀物)とラハル(羊)を創り、地上に降ろした。人類はこれによって食物と衣を得た。
しかし二柱は酒を飲んで争いはじめる。羊は「私は衣を与え、王の食卓を飾る」と誇り、穀物は「私は麦芽とビールを生み、農夫を養う」と応じる。互いの欠点を挙げて論じ合った末、エンリルとエンキが裁定を下し、穀物のほうが優れていると宣した。
論争詩というシュメールの文学形式は、二つの事物を人格化して優劣を論じさせるものである。夏と冬、鋤と鶴嘴、銀と銅——さまざまな対が論じられた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
穀物そのものが神であるという点が、この女神を規定する。麦の穂が女神の姿として理解された。
農耕の女神としては、ニサバも穀物に結びつく。ニサバがのちに書記の女神になったのに対し、アシュナンは穀物の神格にとどまった。
関わる神格・伝承
ラハルと対をなす。エンリルとエンキに創られた。クスと関係する。
文化的足跡
『羊と穀物の論争』は、世界最古の論争文学の一つとして、比較文学において引用される。