イェル・タンル
イェル・タンル · イェルテングリ · チェルテンゲル
トルコとアルタイの民間信仰における大地の神。天のギョク・テングリのかたわらで背景に控え、人の姿で描かれることは少ないが、しばしば女性とされる。昔話では、地中に埋められた弱い子を養って勇士に育てる。
解説
概要
イェル・タンル(イェルテングリ、チェルテンゲルとも)は、トルコとアルタイの民間信仰と神話における大地の神である。天の神ギョク・テングリのかたわらで背景に控え、人の姿で描かれることは少ないが、しばしば女性の存在として捉えられる。ときに悪や、人の官能的なものを表すともされる。大地あるいは世界は「イェルティンチ」と呼ばれた。モンゴル・シベリアの体系に含めて扱う。
信仰
チュルクの世界観では、天と地が一対をなす。8世紀のオルホン碑文は、「上に青き天、下に褐色の大地が造られたとき」という定型句で世界の始まりを語る。
ある昔話では、弱く病がちな子を親が地中に埋めると、子は三日ののちに強くなって勇士として現れる。子を授からない女性は、聖なる木の下で母なる大地に祈る。昔話のなかでは、母なる大地が勇士に乳を与え、勇士は信じがたい力を得る。ヤクートの英雄叙事詩でも、のちに無敵となる勇士は幼いころ弱く、親にさえ疎まれるが、地中に埋められて大地の神に養われ、たくましく美しい伝説の英雄となる。
大地の神を描いた絵はないとされるが、大きなブナの木の幹に住む白髪の女として語られることもある。その木の枝は天まで届いているという。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
テングリと対をなす。モンゴルの大地の女神エテュゲン・エケと同じ位置を占める。
文化的足跡
トルコ語の「イェル」は、今日も大地や場所を意味する語として使われている。
なおモンゴル・シベリアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。