ヤマドゥータ
ヤマドゥータ · ヤマの使者 · Yamaduta
冥界の神ヤマの使者で、解脱を得られなかった死者の魂をヤマの国へ連れて行く。罪を重ねたアジャーミラの臨終に現れたが、恐れた彼が末の子の名「ナーラーヤナ」を叫ぶとそれがヴィシュヌの名でもあったため、ヴィシュヌの使者が現れて退けた。名を唱えること自体の救いの力を示す。
解説
概要
ヤマドゥータは、冥界の神ヤマの使者たちで、解脱を得られなかった死者の魂をヤマの国へ連れて行く。臨終の床に現れる恐ろしい使者として知られ、なかでも『バーガヴァタ・プラーナ』が語るアジャーミラの物語は、神の名を唱えることの力を説くものとして広く親しまれてきた。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。群として現れるため群記事とする。
アジャーミラの物語
アジャーミラは、もとは敬虔なバラモンであったが、森で出会った女性に惹かれて家族を捨て、罪を重ねる暮らしを送るようになった。末の息子には「ナーラーヤナ」と名をつけた。やがて死の床についたアジャーミラの前に、恐ろしい姿のヤマドゥータたちが現れる。怯えたアジャーミラは、思わず末の息子の名を叫んだ——「ナーラーヤナ!」
それは同時に、ヴィシュヌの名ナーラーヤナでもあった。すると、ヴィシュヌの使者ヴィシュヌドゥータたちが現れ、ヤマドゥータを退けた。アジャーミラは子を呼んだにすぎなかったが、それでも神の名を唱えたことになったのである。アジャーミラは命を延ばされ、以後は修行に励んで解脱を得たという。神の名を唱えること自体に救いの力があるという、バクティ(神への信愛)の教えを示す物語である。
二つの使者
罪ある者を冥界へ連れて行くヤマドゥータと、信仰ある者をヴィシュヌの天界へ導くヴィシュヌドゥータ。臨終の床にどちらの使者が来るかが、死後の行方を決めるとされた。そして、最期に何を唱えるかが、どちらの使者を呼ぶかを決めるのである。
東アジアの獄卒へ
ヤマの使者の観念は仏教とともに東アジアへ伝わり、冥界の獄卒の観念に影響を与えた。日本や中国の地獄の鬼、牛頭と馬頭も、同じ役割を担っている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アジャーミラを救うヴィシュヌの使者を描いた図である。
関わる神格・伝承
ヤマの使者で、ナーラーヤナの名によって退けられた。
文化的足跡
アジャーミラの物語は、神の名を唱える功徳を説く例として、今日もヴィシュヌ派の説法で語られている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。