ヴァジュラキーラヤ
ヴァジュラキーラヤ · ドルジェ・プルバ · ヴァジュラクマーラ
「金剛の杭」を意味する憤怒のヘールカ。金剛薩埵の憤怒形で、障碍を除く最も強力な修法とされる。三面六臂で儀礼用の短剣プルバを持ち魔を踏む。パドマサンバヴァが修行の障碍を退けた本尊。
解説
概要
チベット仏教において、ヴァジュラキーラヤ(サンスクリット語で「金剛の杭」、チベット語ドルジェ・プルバ)あるいはヴァジュラクマーラ(「金剛の童子」)は、すべての仏の悟りの活動を体現する憤怒のヘールカの本尊である。
その修法は、障碍を除き、慈悲に敵対する力を破壊するうえで最も強力なものとして知られる。ヴァジュラキーラヤはカギェー——ニンマ派の八大本尊——の一つである。
起源
ヴァジュラキーラヤは、金剛薩埵の憤怒形である。伝えによれば、パドマサンバヴァがネパールのヤンレシューの洞窟で修行中、障碍に遭ってインドからヴァジュラキーラヤのタントラを取り寄せ、これによって障碍を退けたという。以後、パドマサンバヴァの主要な修法の一つとして、チベットに伝えられた。
チベットに伝わった数少ないインド起源のタントラのうち、ヴァジュラキーラヤはサキャ派とニンマ派の双方で重視される。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ヴァジュラキーラヤの像である。
固有の図像上の特徴は、プルバあるいはキーラと呼ばれる杭(三角錐の刃を持つ儀礼用の短剣)を持つことである。通常、髑髏の冠のなかに異なる色の三つの顔で表され、中央の顔は青、左は赤、右は白である。六本の腕を持ち、二本はプルバを、二本はそれぞれ金剛杵を、一本は燃える羂索を、一本は三叉戟を持つ。足下に、修行の障碍を表す魔を踏みつける。
翼を持ち、配偶の女尊ディプタチャクラと抱擁する姿で表される。
杭という持物が、この尊格を規定する。プルバは大地に打ち込んで魔を釘づけにする道具であり、障碍を「固定して動けなくする」という働きを表す。
関わる神格・伝承
金剛薩埵の憤怒形。ニンマ派の八大ヘールカの一。パドマサンバヴァの主要な本尊。
文化的足跡
プルバはチベット仏教の儀礼具として広く知られ、ネパールや西洋でも工芸品として流通している。
なおチベット仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。