持金剛仏
じこんごうぶつ · ヴァジュラダラ · 金剛総持
チベット仏教新訳諸派の本初仏。もと五智如来に続く第六尊であったが、五仏を統括する原初の仏に昇格した。青い身色で両腕を交差させ金剛杵と金剛鈴を持つ。カギュ派ではティローパに直接教えを授けた。
解説
概要
持金剛仏(蔵 rdo rje 'chang、梵 Vajradhara)は、大乗仏教の信仰対象である如来の一尊。チベット仏教のカギュ派、ゲルク派において崇拝され、新派(サルマ)においては法身仏として扱われている。
純粋な名称は「持金剛」だが、この漢訳名は執金剛神(ヴァジュラパーニ)の呼称として用いられることもあるため、両者を区別するために、それぞれ「持金剛仏」「持金剛神」と書き分けられる。
梵名「ヴァジュラダラ」の「ダラ」(持、執持)を「ダーラニー」(陀羅尼、総持)と混同したと考えられる金剛総持の漢訳名でも知られる。
本初仏
元来は五仏(五智如来)に続く第六尊として配置されていたが、その後、五仏の特性のすべてを兼ね備えると同時に、五仏を統括する第六尊へと昇格した。法身普賢や金剛薩埵と並んで本初仏(アーディブッダ)として尊崇されている。
本初仏とは、すべての仏の源であり、始めも終わりもない原初の仏である。チベット仏教の新訳諸派(カギュ・サキャ・ゲルク)では持金剛仏、旧訳ニンマ派では普賢王如来がこの位置に置かれる。
カギュ派の伝承では、持金剛仏がティローパに直接教えを授け、ナーローパ、マルパ、ミラレパへと相承されたとする。人間の祖師に先立つ法の源として、この仏が置かれている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、持金剛仏像である(サンフランシスコ・アジア美術館蔵)。
青い身色で、両腕を胸前で交差させ、右手に金剛杵、左手に金剛鈴を持つ。金剛杵と金剛鈴はそれぞれ方便と智慧を表し、両腕を交差させることで両者の合一を示す。宝冠と装身具をまとった報身仏の姿で表される。
配偶の女尊プラジュニャーパーラミター(般若仏母)と抱擁する父母仏の姿でも表される。
関わる神格・伝承
本初仏。金剛薩埵としばしば混同されるが別の尊格。五智如来を統括する。
日本の密教にはこの尊格は伝わらず、チベット仏教に固有である。
文化的足跡
チベット仏教の寺院において、持金剛仏はカギュ派・ゲルク派の祖師の系譜図(グル・パランパラー)の最上部に描かれる。法の源としての位置を、図像が示している。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。