トルンガルスク
トルンガルスク · トルンガサク · Torngarsuk
イヌイトの海・死・冥界の神で、シャーマンの助力霊トルナトの長。「偉大なトルナク」を意味し、姿は熊とも片腕の男とも小人とも語られる。宣教師によって悪魔と同定され、『地獄の辞典』に悪魔として記載された。
解説
概要
北米先住民のイヌイトの宗教、とりわけグリーンランドの伝承において、トルンガルスク(トルンガサクとも)は海、死、そして冥界の神であり、イヌイトの万神殿においてより重要な神格の一つである。
守護の神々の一群トルナトの長であるとされる。
信仰
「トルンガルスク」は、「偉大なトルナク」を意味する。トルナク(複数形トルナイト)は、シャーマン(アンガコック)を助ける霊である。シャーマンは修行を経てトルナクを得て、この霊を通じて遠くを見通し、病を癒し、海の女神セドナのもとへ赴く。トルンガルスクはそのなかで最も大きな霊であり、シャーマンを守る存在である。
その姿は一定しない。大きな熊、片腕の男、指ほどの小人、巨大な人と、土地や語り手によってさまざまに語られる。姿はなく、見ることはできずにただ感じられるだけだという伝えもある。
1721年にグリーンランドを訪れたデンマークの宣教師ハンス・エーゲデは、トルンガルスクを悪魔とみなした。のちにコラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』(1818年)にも、トルンガルスクは悪魔として、いくつもの綴りで載せられている。グリーンランドのキリスト教化のなかで、この土地の神は悪魔と位置づけられた。
図像と象徴
主画像は、『地獄の辞典』の1863年版に載るルイ・ル・ブルトンの挿絵で、氷の上で釣りをする熊の姿のトルンガルスクを描く。
系譜と関係
トルナトの長。セドナと海の領域を共有する。シャーマンの守護者。
シャーマンが骨や皮から作り、命を与えて敵に放つ怪物に、トゥピラクがある。
文化的足跡
カナダのヌナツィアヴットに、トルンガット山地国立公園がある。「トルンガット」はトルナイトに由来し、「霊の住む場所」を意味する。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語のうちには氏族や個人の所有物として扱われるものがあり、公開の場で語ることが適切でない場合がある。