ティシュパク
ティシュパク · Tishpak · Tišpak
エシュヌンナの守護神で戦と蛇と王権の神。シュメールにもアッカドにも起源を持たず、土着のニンアズを押しのけてその獣ムシュフシュを引き継いだ。海の怪物ラブを倒して王権を得る神話は、エヌマ・エリシュと同型。
解説
概要
ティシュパク(Tišpak)は、メソポタミアの神で、古代都市エシュヌンナとその勢力圏——イラクのディヤーラ地方——に結びついた。主として戦の神であったが、蛇——神話上のムシュフシュとバシュムを含む——と王権にも結びつけられた。
起源
ティシュパクはシュメールにもアッカドにも起源を持たず、エシュヌンナのもとの守護神ニンアズを押しのけた。両者の図像と性格は似ていたが、大半のメソポタミアの資料において正式に同一とはみなされなかった。
フルリの天候神テシュブと名が似ることから、フルリ起源とする説がある。ただし確証はなく、エラム起源説もある。
神話・物語
『ラブとティシュパク』と呼ばれる神話が知られる。ラブという海の怪物が現れて国土を荒らしたとき、神々の会議はこれを倒す者に王権を与えると定めた。ティシュパクは当初これを拒んだが、最後にはこれを倒した。
この神話は、マルドゥクがティアマトを倒して王権を得る『エヌマ・エリシュ』の構造と同型である。怪物を倒すことで王権を得るという型が、地域ごとの神で繰り返されている。
エシュヌンナの王は、ティシュパクの代理として統治すると称した。王碑文において、王は「ティシュパクの僕」と名乗る。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
ニンアズから引き継いだムシュフシュが、この神の獣である。エシュヌンナの円筒印章には、蛇形の怪物を伴う神の姿が刻まれる。
外来の神が土着の神を押しのけるという過程が、この神を規定する。図像と性格が似ていたために交替が可能であり、その獣は引き継がれた。ムシュフシュはさらにマルドゥクへ、ナブーへと受け継がれていく。
関わる神格・伝承
ニンアズに取って代わった。ムシュフシュとバシュムを獣とする。テシュブとの関係が論じられる。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。エシュヌンナ法典——ハンムラビ法典に先立つ法典——を残した都市の神として、法制史の文脈で言及される。