タレイア
タレイア(ムーサ) · タリア · Thaleia
喜劇と牧歌を司るムーサで、名は「花咲く」「豊かに実る」を意味し宴の賑わいに通じる。美の三女神カリスの一柱にも同名のタレイアがおり、別人である。
解説
概要
タレイア(Θάλεια / Thaleia)は、喜劇と牧歌を司るムーサである。名は「花開く」「栄える」を意味する動詞タッレインに通じ、宴の賑わいを指す語でもある。ディオドーロス『歴史叢書』(4.7)の語源解釈では、詩に讃えられた人々が長い時を経ても栄え続けることにちなむ。
同名の女神はほかに二柱いる。アプロディーテーに従う美の三女神カリスの一柱と、『イーリアス』第18歌でアキレウスの嘆きに集まるネーレーイスの一柱であり、いずれも別人である。
神話・物語
アポロドーロス(1.3.4)は、アポローンとの間にコリュバンテスを生んだとする。コリュバンテスは楽器を打ち鳴らして踊る半神たちで、小アジアの母神キュベレーの祭儀に付き従う。喜劇の女神が、恍惚をともなう祭儀の担い手を生むという系譜になっている。
固有の逸話はこれ以外にほとんどない。喜劇がアテーナイの大ディオニューシア祭で公式の競演種目となったのは前486年であり、その守護神としての彼女の役割も、古い神話ではなく後代の分業の整理によって定まった。ローマ期には性格が定着しており、スタティウス『シルウァエ』(2.1)は、喜劇作家メナンドロスの台詞を朗誦する少年をタレイアが喜び、薔薇の冠でその髪を乱すだろうと詠んでいる。
図像と象徴
持物は喜劇の仮面、牧歌を示す羊飼いの杖、そして蔦の冠である。悲劇の仮面を持つメルポメネーと対をなし、二つの仮面が並ぶ図像は今日まで演劇そのものの記号として使われ続けている。
本ページの主画像は、後2世紀前半のローマの《ムーサの石棺》(ルーヴル美術館 Ma475)に彫られた彼女で、喜劇の仮面を手にする。
系譜と関係
父ゼウス、母ムネーモシュネー。九柱の一。アポローンとの子コリュバンテス。
文化的足跡
悲劇と喜劇の仮面を組み合わせた記号は、劇場・演劇学校・演劇賞の標章として広く用いられている。二柱のムーサの持物が、そのまま演劇という制度の紋章になった例である。小惑星(23)タレイアもこの名を負う。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。