タングリスニルとタングニョースト
タングリスニル · タングニョースト · Tanngrisnir
トールの戦車を引く二頭の山羊で、名は「歯を剥く者」「歯を軋らせる者」。屠って食べても骨と皮から翌日に蘇る。骨を割った農夫の子シャールヴィが、罰の代わりにトールの従者となった。
解説
概要
タングリスニルとタングニョースト(Tanngrisnir and Tanngnjóstr)は、北欧神話において神トールの戦車を引く山羊である。
『古エッダ』と『新エッダ』に確認される。名はそれぞれ「歯を剥く者」「歯を軋らせる者」と訳される。
神話・物語
『新エッダ』は、トールが山羊を料理すると、その肉が糧となり、翌日には骨と皮から再び生き返ると記す。骨を傷つけてはならないという条件がある。
エギルとシャールヴィ。 トールとロキがヨトゥンヘイムへ向かう途上、農夫の家に泊まった。トールは山羊を屠って一同に振る舞い、骨を皮の上に置くよう命じた。
農夫の子シャールヴィが、髄を取ろうとして腿の骨を割った。翌朝トールが槌で骨と皮を聖別して山羊を蘇らせると、一頭が後脚を引きずっていた。
激怒したトールに対し、農夫は詫びて子のシャールヴィと娘のロスクヴァを従者として差し出した。二人は以後、トールに仕える。
解釈
食べても再生する動物という主題は、北欧の他の記述にも現れる。ヴァルハラの猪セーフリームニルも、毎日食べられて翌日には元に戻る。
尽きない食物という観念が、これらの物語に共通する。
骨を傷つけると再生が損なわれるという条件は、シャーマニズムにおける動物の再生の観念——骨を保てば動物は蘇る——と比較されてきた。北ユーラシアの狩猟民に広く見られる信仰である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『北欧の英雄と神々』(1832年)のトールの図である。山羊に引かれた戦車を描く。
トールが戦車で天を駆ると、その轟きが雷鳴になるとされた。「雷の乗り物」(レイズ)という語が、トールの名の一部にも現れる。
関わる神格・伝承
トールの山羊。シャールヴィとロスクヴァの由来。
文化的足跡
北欧の伝統的なクリスマスの飾り「ユールの山羊」(ユールボック)は、トールの山羊に由来するとする説がある。藁で作った山羊を飾る習俗が、今日も続いている。