スラサー
スラサー · シラス · Surasa
蛇の母とされる女神。『ラーマーヤナ』でランカーへ海を渡るハヌマーンを試すため巨大な蛇の姿で現れ、「私の口に入れ」と告げた。ハヌマーンが大きくなれば口も大きく開くので、突然親指ほどに縮んで口に入り、閉じる前に出て定めを満たした。力でなく知恵の試しである。
解説
概要
スラサー(Surasā)は、ヒンドゥー教で蛇たちの母とされる女神である。叙事詩『ラーマーヤナ』では、シーターを探して海を渡るハヌマーンの前に巨大な蛇の姿で立ちはだかり、その知恵を試す役を担う。敵ではなく、英雄を試す者である。
神話・物語
『ラーマーヤナ』によれば、スラサーは、聖仙カシュヤパに嫁いだダクシャの娘たちの一人であり、蛇(ナーガ)たちの母となった。同じく蛇の母とされるカドゥルーと、その役割は重なっている。
ランカー島へ向かうハヌマーンの力と知恵を試そうと、神々はスラサーを送り出した。巨大な蛇の姿で海の上に現れたスラサーは、「ここを通る者は皆、わたしの口に入る定めだ」と告げる。ハヌマーンが身体を大きくすると、スラサーも口をそれに合わせて大きく開いた。ハヌマーンがさらに大きくなれば、口もさらに大きくなる。するとハヌマーンは、突然親指ほどの大きさに縮み、素早く口のなかに入って、口が閉じる前に外へ出てきた。「口に入る」という定めを守りながら、食われずにすんだのである。力で押し切るのではなく、条件の言葉を満たして切り抜ける知恵の試しであった。スラサーは本来の姿に戻り、ハヌマーンの旅の成功を祈った。
海を渡るハヌマーンは、休息をすすめる山マイナーカ、知恵を試すスラサー、影を捕らえる怪物シンヒカーと、三つの試練に出会う。英雄が旅の途上で段階を踏んで試されるという、叙事詩によく見られる構成である。
図像と象徴
本サイトの主画像は、バンコクのワット・プラケーオの回廊に描かれた『ラーマキエン』(タイ版ラーマーヤナ)の壁画である。
系譜と関係
ハヌマーンを試した。ダクシャの娘で、カドゥルーと役割が重なる。
文化的足跡
ハヌマーンとスラサーの場面は、インドと東南アジアの舞台芸術で繰り返し演じられている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。