シンビ
シンビ · キンビー · ビシンビ
バコンゴの伝統宗教の水と自然の守護霊。人や蛇、陶器、瓢箪、火の粉の姿で現れ、生者の世界と祖先の世界を分かつ境を行き来するとされる。奴隷貿易によってアメリカ南部のフードゥー、キューバのパロなどにも受け継がれた。
解説
概要
シンビ(複数形ビシンビ、バシンビ)は、中央アフリカのバコンゴの伝統宗教における、水と自然の守護霊である。アメリカ合衆国南部のフードゥー、キューバのパロなど、アフリカ系ディアスポラの霊的伝統にも受け継がれている。アフリカの体系に含めて扱う。
名
シンビという語の歴史的な記録は乏しいが、バントゥー語、コンゴ語を話す人々のあいだで生まれた語であることは一致して認められている。キコンゴ語で「つかむ、保つ、守る」を意味するシンバに由来するとする見方があり、17世紀のキコンゴ語の辞書には「共同体の名士」を意味するイシンバ・イア・ンシの語が記録されている。バシンビは「守り手」とも訳される。
信仰
バコンゴの人々は、ビシンビを水の霊(キコンゴ語ンキシ・ミア・マンバ)と考え、人、蛇、陶器、瓢箪の蔓、あるいはコンゴの創世神話で宇宙を生んだ火花に似た火の粉「カルンガ」として現れるとしてきた。鳥や捻じれた木、人魚のような姿で現れるともいわれる。ビシンビは自然の守り手であり、生者の世界クー・セケと祖先の霊の世界クー・ンペンバのあいだを分かつカルンガの線を行き来する仲介者とされる。
大西洋奴隷貿易によって多くのバントゥー系の人々がアメリカ大陸へ連れ去られたため、シンビへの崇拝は今日、アメリカ合衆国、ブラジル、キューバ、ハイチなどにも残っている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらない。主画像は、アンゴラのオヴィンブンドゥの人々が1950〜60年代ごろに作った水の霊の木像「ドナ・フィッシュ」(ママ・ムントゥ)で、シンビそのものを表したものではない。
系譜と関係
ンザンビを至高神とするバコンゴの世界観に属する。水の霊として、キアンダ、マミ・ワタと比べられる。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。