サテュロス
サチュロス · サティロス
ギリシア神話の森の精。酒神ディオニューソスに従う半人半獣で、初期は馬の耳と尾をもつ。酒と音楽、舞踏と情欲を好み、野生の生命力を体現する。
解説
概要
サテュロス(Σάτυρος / Satyr)は、ギリシア神話に登場する森の精であり、酒神ディオニューソスにつき従う半人半獣の存在である。人の姿を基としながら、馬の耳と尾をもち、団子鼻をした男の姿で表された。酒と音楽、舞踏と情欲を好み、野生の生命力そのものを体現する。
登場する伝承
サテュロスは、ディオニューソスの一行に加わって、笛を吹き、踊り、酒に酔いしれ、ニンフや女信徒メナデスを追いかけまわす、陽気で奔放な存在として語られる。決まった系譜をもたず、ヘルメースの子とも、ニンフの子ともされるが、多くはただ「野に湧く精」として、いつの世にも山野に在るものと考えられた。
年老いたサテュロスはシレノスと呼ばれ、なかでもディオニューソスを育てた養い親シレノスは、酔うほどに知恵を語る者として名高い。笛の名手マルシュアスは、アポローンに音楽の腕を競って敗れ、生きながら皮を剥がれたと伝えられる。アテナイのディオニュシア祭では、サテュロスに扮した合唱隊が登場するサテュロス劇が、悲劇のあとの余興として演じられた。
図像と象徴
サテュロスは、前6世紀の黒絵式陶器にすでに現れ、ディオニューソスの行列のなかで踊る、馬の耳と尾をもつ荒々しい姿で描かれた。ヘレニズム期になると、その像はしだいに山羊の脚や角をもつ姿へと移り変わり、牧神パーンに近づいていった。本図は、幼いディオニューソスを抱くシレノスを表したローマ時代の大理石像で、酒神とサテュロスの結びつきをよく伝えている。
関係する神格
サテュロスは、何よりもディオニューソスの従者としてその一行をなし、牧神パーンとも近しい。ローマでは、牧神ファウヌスに従う森の精ファウヌス(ファウン)と重ね合わされたが、こちらはより穏やかで人に優しい存在とされた。
文化的足跡
酒と音楽、抑えのきかない欲望を体現するサテュロスの姿は、人のうちなる野生を映す鏡として、古来くり返し造形されてきた。ルネサンス以降の絵画や彫刻にも好んで取り上げられ、山羊の脚をもつその像は、今日のファンタジー作品やゲームにも受け継がれている。