サモディヴァ
サモディヴァ · サモヴィラ · ヴィラ
ブルガリアと北マケドニアの森の妖精で、南スラヴのヴィーラのブルガリアでの呼び名。白い羽衣をまとう美しい娘で、衣を奪えば従わせられる。夜に輪舞し、見た男を死ぬまで踊らせる一方、薬草の知識を与えもする。
解説
概要
サモディヴァ(サモヴィラ、ヴィラとも)は、ブルガリアと北マケドニアの伝承に現れる森の妖精である。セルビアやクロアチアでヴィーラと呼ばれる存在のブルガリアでの呼び名で、ヴィラの名は13世紀、サモヴィラは15世紀、サモディヴァは18世紀の記録に現れる。白い衣をまとった美しい娘の姿で泉や川のほとりに住み、夜には輪になって踊る。見た男を死ぬまで踊らせる危険な存在である一方、薬草の知識を授け、英雄を助けることもある。
なお本サイトの分類では、スラヴ神話の体系に含めて扱う。
羽衣を奪われる娘
サモディヴァは長い髪の美しい娘で、白い衣には羽がついているとされる。その衣を奪えば、サモディヴァを従わせることができる。羽のある衣を奪われて人の妻になる天の娘の話は、ユーラシアに広く分布する型であり、日本の天女の羽衣伝説とも同じ形をしている。
夜の輪舞
サモディヴァたちは、夜になると水辺や森の空き地で輪になって踊る。草が円形に枯れている場所は、その踊りの跡とされた。実際には、茸が輪の形に生える菌輪という現象であり、ヨーロッパ各地で同じものが妖精の踊りの跡と見なされてきた。通りかかった男は踊りに引き込まれ、力尽きるまで踊らされる。踊りを見ただけで口がきけなくなる、あるいは命を落とすとも言われた。
害と恵み
一方でサモディヴァは薬草の知識を持ち、病を癒すこともある。南スラヴには、サモディヴァから薬草の知識を授かったとされる治療者の伝承がある。危険な存在であると同時に、知恵の源でもあった。
セルビアやクロアチアの英雄叙事詩のなかでは、ヴィラがマルコ王子を助け、英雄と義兄弟の契りを結ぶ。南スラヴの英雄譚において、ヴィラは多くの場合英雄の味方である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、イギリスの画家アンディ・パチョレクが2011年に描いたポーランドのヴィワ(ヴィラ)である。ブルガリアのサモディヴァと同じ系統の存在として掲げる。
関わる伝承
ルサールカと混同されることがある。ただし南スラヴのサモディヴァが主に森の存在であるのに対し、東スラヴのルサールカは水の存在である。
文化的足跡
サモディヴァは、ブルガリアの民謡や現代の文学に広く登場する。
なおスラヴの民間伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。