サマンタバドリー
サマンタバドリー · クントゥサンモ · 普賢仏母
ニンマ派の本初仏普賢王如来の配偶にして本初の母なる仏。法身のダーキニーの相で、迷妄が決して生じたことのない仏性を表す。白い裸形で装身具をつけず、空性と明知の不可分を示す。
解説
概要
サマンタバドリー(サンスクリット語 samantabhadrī、チベット語クントゥサンモ)は、金剛乗仏教の伝統におけるダーキニーにして女性の仏である。
一部のチベット仏教徒に本初仏として知られる普賢(普賢王如来)の配偶にして女性の対応者である。サマンタバドリー自身は本初の母なる仏として知られる。
教義上の位置
サマンタバドリーは、三身(仏の三つの身体)のうち法身のダーキニーの相である。それゆえ、迷妄と概念的な思考が決して生じたことのない仏性の相を表す。神的な女性の諸相の源泉として、大いなる母、あるいは般若波羅蜜の一相として理解されうる。
サマンタバドリーは主としてチベット仏教のニンマ派(旧訳派)に見られる存在である。新訳諸派においてこれにほぼ相当するのはヴァジュラダートゥ・イーシュヴァリーで、青黒く、その配偶は持金剛仏である。
ゾクチェンの教えにおいて、普賢王如来とサマンタバドリーの抱擁は、空性(女性)と明知(男性)の不可分を表す。本初の仏の対が、悟りの二つの側面の合一を示している。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、本初仏普賢王如来とサマンタバドリーの図である(17世紀)。
白い身色で、裸形、装身具をつけず、青黒い裸形の普賢王如来と抱擁して坐す。装身具をつけないことは、報身の仏(宝冠と装身具をまとう)と異なり、法身の仏であることを示す。
裸形と無装飾が、この尊格を規定する。本初の状態には何も付け加えられていない。
関わる神格・伝承
普賢王如来の配偶。ニンマ派の本初仏の対。般若波羅蜜の一相。
普賢王如来とサマンタバドリーは、持金剛仏(新訳派の本初仏)と対応する。宗派によって本初仏の姿が異なる。
文化的足跡
ニンマ派のゾクチェンの修法において、この父母仏は瞑想の最終的な対象として位置づけられる。
なおチベット仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。