レンペト
レンペト · Renpet
「年」を意味するエジプト語の神格化で、頭上に椰子の若枝を載せた女性として描かれる。「永遠の女主」と呼ばれ、豊穣・若さ・春を体現した。治世年を記す定型句の冒頭に現れ、文字がそのまま女神である。
解説
概要
レンペト(Renpet)は、エジプト語で「年」を意味する語であった。その象形文字は美術において、頭上に椰子の若枝——時を象徴する——を載せた女性として比喩的に描かれた。
しばしば「永遠の女主」と呼ばれ、また豊穣、若さ、春を体現した。
職能
この文字は、エジプト史を通じて記念碑と文書に、ファラオの治世年を記す句の冒頭として規則的に現れる。「レンペト・セプ〇〇」——治世第〇〇年——という定型である。
すなわちレンペトは、女神であると同時に、日付を書くための文字である。年代を記すたびに、この女神の名が書かれることになる。
椰子の若枝が象徴とされるのは、椰子が一年に十二の枝を出すという観察による。切り込みを入れた椰子の枝は、年を数える道具として神殿の壁に描かれた。書記の女神セシャトと、フフ(無限)も同じ椰子の枝を持つ。
時間の観念
エジプトには二つの時間の観念があった。ネヘフ(周期的に繰り返す時間)とジェト(変わらず持続する時間)である。年の女神レンペトは、前者——季節の循環——に属する。
「永遠の女主」という称号は、年が繰り返し戻ることを指す。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。頭上に椰子の若枝を載せた若い女性として表される。
文字が神であるという点が、この女神を規定する。「年」という語を書くための記号が、そのまま女神の姿である。抽象的な単位の神格化として、最も直接的な例である。
関わる神格・伝承
セシャト、フフと椰子の枝を共有する。ハトホルの一相とされることもある。
娘レンペトネフェレト(「善き年」)の名も記録される。
文化的足跡
エジプトの治世年の記法は、古代の年代学の基礎資料である。この女神の名を含む定型句が、エジプト史の年表を可能にしている。