イジラク
イジラク · イッジラク · Ijiraq
子供を攫って隠し置き去りにするイヌイトの変身する存在。視野の隅にしか現れず、まっすぐ見ようとすると消える。石積みの道標イヌクシュクは、解放された子が帰る道を示す。北極で子供が迷う危険を伝える伝承である。
解説
概要
イヌイトの宗教において、イジラクは、子供を攫い、隠し、そして置き去りにするとされる変身する生き物である。
石のイヌクシュク(イヌクシュク)は、これらの子供がイジラクに解放を説き伏せることができれば、帰る道を見つけられるようにする。
北バフィンの方言において、イジラクは「変身するもの」を意味する。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
姿
イジラクの姿は定まらない。人にも、カリブーにも、ほかの動物にも姿を変え、あるいはそれらが混じり合った姿をとる。目が横向きについている、あるいは血のように赤いとされる。視界の隅にだけ現れ、まっすぐに見ようとすると消えてしまうという。
子供をさらう
イジラクは子供をさらって隠す。さらわれた子は道を見失い、帰ることができなくなる。石を積んだ道しるべイヌクシュクは、道を示すために置かれるもので、さらわれた子がイジラクを説き伏せて解き放たれれば、イヌクシュクをたどって帰ることができるという。北極の平らな土地では、目印がなければ方角を失ってしまう。子供が道に迷って命を落とすことは、実際にある危険であった。この伝承は、その危険を子供たちに伝えるものである。カルプルイトが海氷の危険を伝えるのと、同じ構造である。
トゥリアクスク
イジラクと近縁の存在にトゥリアクスクがある。半人半カリブーの姿とされる。
両者はしばしば混同される。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。石を人の形に積んだイヌクシュクは、今日カナダを象徴するものの一つであり、2010年のバンクーバー冬季オリンピックの紋章にも用いられた。道しるべであり、狩りの目印であり、そして人がそこにいたことのしるしでもある。
関わる伝承
カルプルイトと同じく、子供に危険を伝える存在。
文化的足跡
土星の衛星イジラクは、この存在にちなんで命名された。イヌイト神話に由来する衛星名の一つである。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語のうちには氏族や個人の所有物として扱われるものがあり、公開の場で語ることが適切でない場合がある。