プラ・プロム
プラ・プロム · 四面仏 · 四面神
ヒンドゥーの創造神ブラフマーのタイにおける姿。仏教徒が幸運と守護の神として祀り、四つの顔それぞれに願いをかける。バンコクのエラワン廟が信仰の中心で、華人社会には「四面仏」の名で広まった。
解説
概要
プラ・プロム(タイ語 พระพรหม)は、ヒンドゥーの創造神ブラフマーがタイで祀られるときの姿である。今日のタイでは、ヒンドゥー教徒よりもむしろ仏教徒によって、幸運と守護をもたらす神として拝まれている。バンコクのエラワン廟の像が信仰の中心で、1980年代からは東南アジアや東アジアの華人社会に「四面仏」の名で広まった。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話を主たる体系とし、仏教を併記する。
仏教国のブラフマー
タイの宗教生活では、上座部仏教と並んで、土地や家を守る霊への信仰が営まれてきた。インドから伝わった神々の多くはこの守護霊の信仰のなかに位置を得ており、プラ・プロムもその一つである。宇宙を創る神という性格は後ろに退き、願いを聞き届け、災いから守る神として祀られる。仏教の宇宙論でも、ブラフマーは梵天界の主(梵天)として仏法を守る側に置かれており、仏教徒がこの神を拝むことに無理はなかった。
エラワン廟
バンコク中心部のエラワン廟は、1956年、国営のエラワン・ホテルの建設で事故が相次いだことから、災いを鎮めるために建てられた。以後、願いの叶う廟として参拝者を集め、タイで最も人の絶えない祠の一つとなった。
参拝者は線香と蝋燭、ジャスミンの花輪を供え、四つの顔それぞれの前で祈る。顔ごとに授ける恵みが異なるとされるためである。木彫りの象を供える習わしもある。願いが叶うと、廟に控える踊り手にタイの古典舞踊を奉納してもらい、礼とする。掛けた願の約束は必ず果たさねばならず、怠ればかえって不運に見舞われるとも言われる。2015年8月には廟の境内で爆弾事件が起き、多数の死傷者が出た。
四面仏
エラワン廟の信仰は、1980年代ごろからシンガポール、マレーシア、インドネシア、台湾、香港、中国本土の華人のあいだに広まった。華人社会ではこの神を「四面仏」あるいは「四面神」と呼び、タイ様式の祠と像をそのまま写して各地に建てている。ヒンドゥーの創造神が、タイの仏教徒の守護神を経て、華人の民間信仰の神となったのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、バンコクのワット・ヤーンナーワーのプラ・プロム像である。
四つの顔を持ち、金色に塗られ、タイ様式の尖った冠と装身具をまとう。インドのブラフマーの四面の図像を受け継ぎながら、姿はタイの神像の様式で整えられている。
関わる神格・伝承
ブラフマーのタイにおける姿であり、仏教の梵天と重なる。タイの商店の祭壇には、手招きする商売繁盛の女神ナーン・クワックとともに置かれることも多い。タイ首相府の庁舎の金色のドームにも、プラ・プロムの像が収められている。
文化的足跡
各地の華人社会に建てられた四面仏の祠は、東南アジアの現代の宗教が国境を越えて広がった例となっている。
なお仏教と、タイおよび華人社会の民間信仰は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。