パヤー・ナーク
パヤー・ナーク · ナーガの王 · Phaya Naga
ラオスとタイのメコン川に住むとされるナーガの王。毎年雨安居明けの夜、メコン川から数十から数百の赤い火の玉が音もなく昇る——天から戻る仏陀をナーガたちが迎えるとされる。原因はメタンガス説や対岸の曳光弾説があり確定していない。寺院の階段の手すりはナーガの姿で作られる。
解説
概要
パヤー・ナーク(「ナーガの王」)は、ラオスとタイを流れるメコン川に住むとされる、ナーガ(蛇の姿の霊)の王である。インドのナーガラージャの観念に由来しながら、メコン流域で独自の信仰を形づくってきた。毎年、雨季の修行期間が明ける夜にメコン川から赤い火の玉が昇る現象は、ナーガが天から戻る仏陀を迎えるものとされる。その原因は、今も確かなことが分かっていない。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話を主たる体系とし、仏教を併記する。
ナーガの火の玉
毎年、雨季の修行期間(安居)が明けるオーク・パンサーの日(陰暦十一月の満月、十月頃)の夜、メコン川から赤い火の玉が空へ昇るという。数十から数百の火の玉が、水面から音もなく昇っては消えていく。これは「ナーガの火の玉」(バンファイ・パヤー・ナーク)と呼ばれ、安居明けに天から戻ってくる仏陀を、川のナーガたちが火の玉で迎えるのだとされる。タイのノーンカーイ県は最もよく知られた見物の地で、数十万人が集まる。
確かめられない原因
この現象については、川底のメタンガスが自然に光るという説や、対岸のラオス側から撃たれる曳光弾だという説などが出されてきた。2002年にはタイのテレビ局が、ラオス側の兵士が銃を撃っていると報じて、論争になった。しかし原因は今も確かめられていない。多くの人々にとって、それはナーガがいることのしるしである。
ナーガに守られる土地
ラオスの古都ルアンパバーンは、十五のナーガに守られているとされる。ラオスやタイの寺院の階段の手すりは、ナーガの姿で作られている。瞑想する仏陀を嵐から守ったナーガの王ムチャリンダの物語は、この地域でとりわけ重んじられている。カンボジアの建国神話でも、王家の母はナーガの王女とされる(プレア・トーンとニアン・ニアックの項を参照)。ナーガは、水と豊かさ、そして王権を結ぶ存在なのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ナーガの像である。
関わる伝承
ナーガラージャに由来し、ムチャリンダと関わる。
文化的足跡
ノーンカーイのナーガの火の玉の祭は、今日のタイの主要な観光行事の一つである。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。