ペリ
ペリ · パリー · パイリカー
ペルシアの伝承に発する、翼をもつ美しい超自然の存在。『アヴェスター』では人を惑わし旱魃をもたらす悪しき女パイリカーであったが、イスラーム化以後は美しく善良な存在に転じた。19世紀ヨーロッパではムーアの詩やシューマンのオラトリオを通じて東方の妖精として流行した。
解説
概要
ペリ(ペルシア語 parī パリー)は、ペルシアの伝承に発し、より広くイスラーム圏とアジアの民間伝承に広まった超自然の存在である。翼をもつ美しい姿で語られ、人の社会に似た社会をなすとされる。古形はゾロアスター教のパイリカーで、宗教の移り変わりのなかで悪しき存在から美しく善良な存在へと評価が転じた。
悪しき存在から美しい存在へ
ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』では、古形のパイリカーは悪しき女の存在で、ダエーワの側に属し、人を惑わし、流れ星として現れ、旱魃をもたらすとされた。イスラーム化ののちのペルシアの文学では、パリーは翼をもち、光り輝き、よい香りを放つ美しい存在として描かれ、人に恋をし、あるいは人を助ける。
文学における位置
ペルシアの詩では、パリーは美しさのたとえとして用いられ、「パリー・ルー」(パリーの顔)は絶世の美人を意味する。アントワーヌ・ガランが『千夜一夜物語』の仏訳に加えた「アフメッド王子と妖精パリ・バヌー」を通じて、ヨーロッパにも知られるようになった。
ヨーロッパにおける受容
19世紀のヨーロッパでは、ペリは東方の妖精として流行した。トマス・ムーアの詩『ララ・ルーク』(1817年)の一篇「楽園とペリ」は、シューマンのオラトリオ『楽園とペリ』(1843年)のもとになった。バレエ『ラ・ペリ』は1843年(ブルクミュラー作曲)と1912年(デュカス作曲)に作られている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、フリーア美術館所蔵(F1937.7)の細密画で、杯と酒瓶を手に飛ぶ翼ある天使を描く。
系譜と関係
パイリカーが古形。ジン、ディーヴと並ぶ超自然の存在である。
文化的足跡
「ペリ」はイラン、トルコ、中央アジアで女性の名として用いられる。
なおゾロアスター教とイスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。