パリアカカ
パリアカカ · パリヤカカ · Pariacaca
ペルー・アンデスの山とその神で、五つの卵から孵った五羽の隼が五人の兄弟となった。火の神ワリャリョ・カルウィンチョと水と雹で戦って勝ち、東の低地へ追った。『ワロチリ写本』は偶像撲滅のための聞き書きが伝承を残した唯一の文献である。
解説
概要
パリアカカは、ペルーのアンデス山脈にそびえる標高5,751メートルの山であり、その山そのものである神(ワカ)である。16世紀末から17世紀初めにワロチリ地方の先住民の伝承を書き留めた『ワロチリ文書』で、中心的な役割を担う。五つの卵から五人の兄弟として生まれ、人の子を食べていた火の神ワリャリョ・カルウィンチョを水と雹で打ち破り、東の低地へ追いやったと語られる。ワロチリの人々の守り神である。
なお本サイトの分類では、インカ/アンデスの体系に含めて扱う。
五つの卵から
パリアカカは、コンドルコトの山に現れた五つの卵から生まれた。卵からは五羽の隼がかえり、それが人の姿となって、五人の兄弟として火の神に挑んだという。パリアカカは五人でありながら一人でもある。複数でありながら一つであるという神のあり方は、アンデスの神々にいくつも見られる。
水と火の戦い
ワリャリョ・カルウィンチョは、人の子を食べる火の神であった。パリアカカは水と雹で攻め、ワリャリョは火で応じた。パリアカカが勝ち、ワリャリョは東の低地アンティへと追われた。高地の水(雨や雪、雹)と、低地の火(熱さや乾き)との対立が、神々の戦いとして語られているのである。高さによって大きく異なるアンデスの自然が、そのまま神話の構図になっている。この戦いは、パリアカカを祀るワロチリの人々と、ワリャリョを祀るワンカの人々との対立も映している。
『ワロチリ文書』
『ワロチリ文書』は、アンデスの人々の言葉ケチュア語で書かれた文書で、アンデスの伝統的な信仰を先住民の言葉で伝える、ほかに例のない資料である。カトリックの司祭フランシスコ・デ・アビラが、偶像崇拝を摘発する目的で、先住民の信仰を聞き書きさせたものであった。信仰を消し去るために記録されたものが、今日その信仰を知るための唯一の手がかりとなっているのである。「アンデスの聖書に最も近いもの」と評されることもある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、パリアカカ山である。
関わる神格・伝承
ワリャリョ・カルウィンチョと対立し、ワロチリの人々の守り神である。
文化的足跡
パリアカカ山とそのまわりは、今日も先住民の共同体の聖地となっている。
なおアンデスの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。