オアンネス
オアンネス · ウアンナ · Oannes
アプカルルの第一ウアンナのギリシア語名。ベーロッソスによれば、魚の身体に人の頭を持ち、ペルシア湾から現れて昼のあいだ人に文字・学・技を教え、夜は海へ戻った。以後何も新たに発明されなかったという。
解説
概要
オアンネス(Oannes、Ὡάννης)は、メソポタミア神話のアプカルルウアンナのギリシア語名である。
バビロンの神官ベーロッソス(前3世紀)がギリシア語で著した『バビロニア誌』に記され、その断片がアレクサンドリアのポリュヒストル、エウセビオス、シュンケッロスを通じて伝わった。
記述
ベーロッソスによれば、バビロニアの最初の年、人々は獣のように無秩序に暮らしていた。そこへエリュトゥラー海(ペルシア湾)から、理性を備えた怪物が現れた。名をオアンネスという。
その身体はすべて魚であったが、魚の頭の下にもう一つ人の頭があり、魚の尾に人の足が付いていた。人の声で語った。その姿は今日まで保存されているという。
オアンネスは昼のあいだ人々のもとに留まり、食物は取らず、文字と諸学と諸技を教えた。都市の建て方、神殿の築き方、法の定め方、土地の測り方を示し、種子と果実の集め方を教えた。人を人らしくするあらゆることを伝え、以後何も新たに発明されることはなかった。日が沈むとオアンネスは海へ戻り、夜を深みで過ごした。両生であったからである。
のちに他の同様の存在が現れたとベーロッソスは記す。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、魚の皮をかぶった賢者の浮彫である。
魚の皮をかぶった人という図像は、アッシリアの浮彫に多数見られる。ベーロッソスの記述する「魚の身体に人の頭」は、この図像の記述とみられる。実際には司祭が魚の皮を頭からかぶった姿であり、外部の観察者がこれを混成の怪物と理解した可能性がある。
海から来る文明の伝授者という主題が、この存在を規定する。エリドゥはペルシア湾に近い最古の都市であり、その神エンキは水の神である。文明が水から来るという観念が、この物語に凝縮されている。
「以後何も新たに発明されることはなかった」という一句は、メソポタミアの知の観念を端的に示す。すべての技は最初に与えられ、以後は伝承されるのみである。
関わる神格・伝承
アプカルルの第一。アダパと同一視される。エンキ/エアに遣わされた。
文化的足跡
オアンネスの記述は、19世紀以降、シュメール文明の起源をめぐる議論、さらには古代宇宙飛行士説のような疑似科学的な言説にも引かれてきた。学術的にはベーロッソスの伝えるバビロニアの伝統として扱われる。