ニーラーデーヴィー
ニーラーデーヴィー · ナッピンナイ · Niladevi
「青い女神」を意味するヴィシュヌの三柱の配偶者の一柱で、シュリーデーヴィー(富)、ブーデーヴィー(大地)とともにラクシュミーの相とされる。タミルではナッピンナイと呼ばれ、七頭の荒れ牛を制したクリシュナの妃となった——北インドの伝承にないタミル固有の妃である。
解説
概要
ニーラーデーヴィー(「青い女神」)は、ヒンドゥー教の南インド、とりわけタミルの伝統で、ヴィシュヌの三柱の妃の一柱として敬われる女神である。富の女神シュリーデーヴィー、大地の女神ブーデーヴィーとともに、いずれもラクシュミーの姿とされ、至福を司る。タミルではナッピンナイの名で知られ、幼いクリシュナが七頭の荒れ牛を制して妻に迎えた牛飼いの娘とされる。北インドの伝承には見られない、タミル固有の妃である。
信仰
南インドのヴィシュヌ派(シュリーヴァイシュナヴァ派)の伝統では、ヴィシュヌには三柱の妃がいる。富の女神シュリーデーヴィー(ラクシュミーそのもの)、大地の女神ブーデーヴィー、そして至福の女神ニーラーデーヴィーである。三柱はいずれもラクシュミーの姿とされる。
神話・物語
タミルの伝承では、ニーラーデーヴィーはナッピンナイと呼ばれる、牛飼いの娘である。幼いクリシュナは七頭の荒れ牛を制して、ナッピンナイを妻に迎えた。この物語は北インドのクリシュナの伝承には見られず、タミルのクリシュナの伝承に固有の妃である。北インドでラーダーが占める位置を、タミルではナッピンナイが占めているとされる。
8世紀の聖詩人アーンダールは、タミル語でヴィシュヌを讃えた十二人の聖詩人アールヴァールのなかで、ただ一人の女性である。その詩集『ティルッパーヴァイ』は、眠るクリシュナを起こしてくれるようナッピンナイに呼びかける。今日も、十二月から一月にかけてのマールガリ月の早朝に、この詩が歌われている。
図像と象徴
固有の図像はまれである。主画像は、タミル・ナードゥ州ショーリンガルのヴィシュヌ派の寺院である。
系譜と関係
ヴィシュヌの妃でラクシュミーの一つの姿であり、ナッピンナイとしてクリシュナの妃とされる。
文化的足跡
『ティルッパーヴァイ』は、今日も南インドで最も広く歌われる信仰の詩の一つである。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。