ムンカルとナキール
ムンカル · ナキール · Munkar and Nakir
墓に葬られたばかりの死者の信仰を問いただす、イスラームの二人の天使。ハディースで語られ、主・宗教・預言者を問う。正しく答えた者の墓は広げられ、答えられない者の墓は締めつけられる。会葬者が墓のそばで答えを教えるタルキーンの習わしがある。
解説
概要
ムンカルとナキールは、イスラームの終末論で、墓に葬られたばかりの死者の信仰を問いただす二人の天使である。名は「知られざる者」と「否認する者」を意味するとされる。クルアーンには名が見えず、預言者の言行を伝えるハディースのなかで語られる。問いに正しく答えた者の墓は広がり、答えられなかった者の墓は締めつけられる。最後の審判を待たずに、報いは墓のなかで始まるのである。アブラハムの宗教の体系に含めて扱い、二人は常に対で語られるため、一つの項目で扱う。
神話・伝承
死者が墓に納められ、弔いの人々が立ち去ると、二人の天使が現れる。黒い顔と青い目をした恐ろしい姿であるという。天使は三つのことを問う。「おまえの主は誰か」「おまえの宗教は何か」「この人(預言者)は誰か」。正しく答えた者の墓は広げられ、天国への窓が開いて心地よい風が吹き込み、死者は復活の日まで安らかに眠る。答えられなかった者の墓は締めつけられ、地獄への窓が開いて、死者は鉄の槌で打たれる。その叫びは、人とジンを除くすべての生き物に聞こえるという。
死から復活までのあいだの状態を、イスラームではバルザフと呼ぶ。死者は最後の審判を待つが、その報いは墓のなかですでに始まる。
信仰
埋葬ののち、弔いの人々が墓のそばで死者に答えを教える習わしがある。タルキーンと呼ばれ、「あなたの主はアッラー、あなたの宗教はイスラーム、あなたの預言者はムハンマド」と唱える。この習わしを行うかどうかは、法学派や地域によって異なる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カズウィーニーの『被造物の驚異』に描かれたムンカルとナキールの挿絵(ウォルターズ美術館蔵 W.659)である。
系譜と関係
墓の問いを行う天使であり、バルザフの観念に属する。
文化的足跡
墓の問いの観念は、イスラームの葬礼や墓地での実践に今日も影響を与えている。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。