ムルング
ムルング · ムングー · Mulungu
東アフリカと中南部アフリカのバントゥ諸語における至高神の名。世界を創ったのち人から離れた遠い神で、日常の祭祀は祖先に向けられる。スワヒリ語で「ムングー」としてキリスト教とイスラームの神の訳語にもなった。
解説
概要
ムルングは、東アフリカと中南部アフリカのバントゥ諸語を話す複数の民族——ケニア、タンザニア、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエなど——における至高神の名である。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
名と語源
バントゥ祖語における神々の最高神、創造者にしてすべての神々の父を指す最初期の名は、おそらくニャンベであった。動詞語根 -àmb-(「始める」)に由来する可能性がある。
バントゥ文化の分化とともに他の名が生じ、「ムルング」は古い南部カスカジ群(前6000年頃)に現れた。
名の語源には議論がある。一つの仮説は、この名が「正される」を意味する動詞語根 -ng- に由来するというものである。
性格
ムルングは遠い神である。世界を創ったのち、人から離れた。
去った理由。 多くの伝承が、神が人から離れた理由を語る。人が火を使って森を焼いたため、人が争ったため、あるいは人が神を煩わせたため——地域によって異なる。
アカンのニャメが老女の杵を嫌って天に去ったのと同じ型である。至高神が遠ざかるという主題は、アフリカ全域に広く分布する。
日常の祭祀は祖先の霊に向けられ、至高神に直接祈ることは稀である。
キリスト教とイスラームの翻訳
「ムルング」は、東アフリカのスワヒリ語圏においてキリスト教の神の訳語として採用された。スワヒリ語聖書では「ムングー」の形で用いられる。
イスラームにおいては、アラビア語のアッラーがそのまま用いられることが多いが、地域によってはムングーも使われる。
土着の至高神の名が、二つの一神教に共有されている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。バントゥ諸文化において、至高神を像に表すことはない。
関わる神格・伝承
ニャンベ、ンザンビ、レザ、チウタと同源あるいは同じ観念。ウンクルンクルと対応する。
文化的足跡
スワヒリ語の「ムングー」は、今日も東アフリカで最も広く用いられる神の名である。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。