モネータ
モネータ · ユーノー・モネータ · Moneta
ローマの女神ユーノーの添え名ユーノー・モネータとして知られる。名は「思い出させる」「警告する」を意味するラテン語に由来する。その神殿に造幣所が置かれたため、英語の money(金)と mint(造幣所)の語源となった。ギリシアの記憶の女神ムネーモシュネーと同一視された。
解説
概要
モネータ(Moneta)は、ローマの女神ユーノーの添え名で、ユーノー・モネータと呼ばれた。名はラテン語で「思い出させる」「警告する」を意味する語に由来する。ユーノー・モネータの神殿のそばにローマの造幣所が置かれたことから、「モネータ」は造幣所や貨幣を指す言葉となり、英語の money(金)や mint(造幣所)の語源となった。
神話・物語
添え名の由来はいくつか語られた。キケロー『予言について』は、地震が起きたときユーノーの神殿から声がして、身ごもった雌豚を償いの犠牲に捧げよと警告したことから、モネータ(警告する女)と呼ばれるようになったと伝える。前390年にガリア人がカピトリウムに夜襲をかけたとき、ユーノーの聖なる鵞鳥が騒いで守備兵に危険を知らせたという名高い話も、のちに添え名の由来と結びつけられたが、この出来事はモネータの神殿が建つより前のことである。
リーウィウス(7.28)によれば、紀元前345年にルキウス・フーリウス・カミッルスがアウルンキ人との戦いの際に神殿を誓い、翌344年、カピトリウムの丘の北の頂(アルクス)にユーノー・モネータの神殿が奉献された。そのそばにローマの造幣所が置かれた。やがて「モネータ」の名は、造幣所と、そこで作られる貨幣を指す言葉となった。英語の money は古フランス語を経てこの語から生まれ、mint は古英語の時代にラテン語 moneta を直接借りた語に由来する。
紀元前3世紀、リーウィウス・アンドロニークスは『オデュッセイア』をラテン語に訳したとき、ムーサたちの母である記憶の女神ムネーモシュネーを「モネータ」と訳した。「思い出させる」女神が、記憶の女神と重ね合わされたのである。
図像と象徴
帝政期の貨幣では、モネータは貨幣そのものの擬人像として、天秤と豊穣の角を持つ女性の姿で表される。天秤は貨幣の重さと品位の正しさを示す。2世紀末からは、金・銀・銅の三種の貨幣を表す三人のモネータが並ぶ図柄も現れる。本サイトの主画像は、アントニヌス・ピウス帝のセステルティウス貨に表されたモネータである。
系譜と関係
ユーノーの添え名であり、ムネーモシュネーと重ね合わされる。
文化的足跡
money と mint の語源として、その名は今日も世界じゅうの言葉のなかに残っている。