魔鬼
魔鬼 · モグワイ · モーグイ
広東語で「悪魔」を意味する語。「魔」はサンスクリットのマーラの音写で、仏典の漢訳のために作られた字である。中国では「妖魔鬼怪」として由来の異なる超自然の存在を分類する。1984年の映画『グレムリン』で特定の生き物の名として西洋に定着した。
解説
概要
魔鬼(広東語でモーグワイ、標準中国語でモーグイ)は、中国語で悪霊や悪魔、化け物を広く指す語である。「魔」はサンスクリットの「マーラ」を写した字で、仏教とともに入ってきた外来の概念が、中国の民間信仰の日常語として根づいたものである。英語圏では映画『グレムリン』を通じて「モグワイ」の名が知られるようになったが、そうした種族の生き物は中国の伝承には存在しない。
なお本サイトの分類では、中国神話・道教の体系に含めて扱う。
仏典から来た字
「魔」は、釈迦の悟りを妨げようとした魔羅(マーラ)の音を写した字である。もとの中国語にはなく、仏典を漢訳する際に用いられるようになったとされる。サンスクリットのマーラは「死」に通じる語で、悪しき存在を指した。これに「鬼」を加えた「魔鬼」が、悪しき存在一般を指す語として定着した。夜叉(ヤクシャ)や羅刹(ラークシャサ)と同じく、仏教を経て中国に入った語彙の一つである。
妖・魔・鬼・怪
中国では、超自然の存在を「妖魔鬼怪」と並べて総称することがある。四つの語はそれぞれ出自が異なる。「鬼」は死者の霊を指し、日本語の「おに」とは意味が違う。「魔」は修行を妨げ人を惑わす外来の存在、「妖」は動物や器物が年を経て変化したもの、「怪」は常ならぬ現象である。死者、外来の魔、変化したもの、現象という、成り立ちの異なるものを一つの言い回しにまとめている。
『グレムリン』のモグワイ
1984年のアメリカ映画『グレムリン』は、「モグワイ」を愛らしい生き物の名として用い、水をかけると増えるといった設定を与えた。これらは映画の創作である。悪魔を意味する普通名詞が、西洋では特定の生き物の名として定着したことになる。香港映画のキョンシーが1985年の作品で決まった姿を得たのと、ほぼ同じ時期の出来事である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、夜叉鬼を描いた図である。
関わる伝承
魔羅に由来する語で、夜叉や羅刹と同じく仏教を経て入った。
文化的足跡
香港映画では、「魔鬼」は今日も悪霊を指す言葉として使われている。
なお道教と中国の民間信仰は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。