柳杏公主
柳杏公主 · リウ・ハイン · 聖母柳杏
ベトナムの四不死の一柱で道母(母神信仰)の中心の女神。天の玉皇大帝の娘が玉杯を割った罪で地上に人として生まれ、二十一歳で死んだのちも地上を忘れられず再び降り、詩を作り旅をし儒学者と応酬した。朝廷は危険視して寺を焼いたが疫病が起き、最終的に称号を与えた。
解説
概要
柳杏公主(リウ・ハイン)は、ベトナムの民間信仰で重んじられる四柱の不死の存在「四不死」の一柱であり、女神を中心とする信仰「道母(ダオ・マウ)」の中心となる女神である。天の玉皇大帝の娘が、宴の席で玉の杯を割った罪で地上に人として生まれ、若くして死んだのちも地上を忘れられず、再び降りてきたとされる。規範にとらわれない女神の信仰は朝廷に危険視されたが、やがて公認された。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話の体系に含めて扱う。
地上に降りた王女
柳杏は、天の玉皇大帝の娘であった。天の宴の席で玉の杯を割ってしまい、その罪で地上へ追われて、ナムディン省の村に人の娘として生まれた。人として結婚し、子も産んだが、追放の期限が尽きて二十一歳で死んだ。それでも地上を忘れられず、柳杏は再び地上へ降りてきた。そして詩を作り、各地を旅し、男たちと語り合って自由に振る舞った。当時の名高い儒学者と詩の応酬をしたとも伝えられる。
抑えられ、認められた信仰
規範にとらわれず振る舞う女神への信仰を、朝廷は危険なものと見なし、軍を送って女神の寺を焼いた。すると疫病が起こり、朝廷はこの女神を認めざるをえなくなった。最終的に朝廷は女神に称号を与えた。女性たちが担ってきた信仰が、国家の抑圧を経て公認に至ったのである。
道母の信仰
道母は、女神を中心とするベトナムの信仰である。天、地、水、山林の四つの領域を、それぞれの母神が治めるとされ、柳杏はそのなかで大地の領域を治める。霊媒が女神や神々に次々と憑かれ、衣装を替えながら舞うレン・ドンと呼ばれる儀礼があり、その霊媒には伝統的に性的少数者が多い。1950年代から80年代には迷信として抑えられたが、1990年代以降に再び盛んになった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ベトナム民族学博物館の像である。
関わる伝承
ベトナムの家々では、家族の行いを天に報告する竈の神オン・タオも祀られる。
文化的足跡
2016年、「三府における母神信仰の実践」がユネスコの無形文化遺産に登録された。ナムディン省フー・ザイの寺院は、今日も道母の最大の聖地である。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。