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PLATE — KRSNIK
SLAVI · スラヴ神話
KRSNIK

クルースニク

クレスニク · クルスニク · クルスニック

スロヴェニアとイストリアに伝わる存在。白い羊膜に包まれて生まれた者がこれになり、夜に魂が身体を離れて白い獣となり、黒い獣クドラクと戦って村の実りを守る。

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解説

概要

クルースニク(クロアチア語 krsnik、スロヴェニア語 kresnik、女性形 krsnica)は、スロヴェニアとイストリア半島のスラヴ人に伝わる存在である。白い羊膜に包まれて生まれた者がこれになり、夜、魂が身体を離れて獣の姿をとり、悪しき者と戦う。戦う相手はクドラク(kudlak)——赤い、あるいは黒い羊膜に包まれて生まれた者の成れの果てで、吸血鬼にあたる。

村ごとに一人いるとされ、吸血鬼から共同体を守るだけでなく、豊作と健康と幸福を確かなものにする役を負う。人と家畜を癒す力を持ち、その術はヴィーラたちから授かったと語られる。魔女や吸血鬼と同じ「生まれつきの徴を持つ者」でありながら、白い側に振り分けられた点にこの存在の特徴がある。

登場する物語

型はほぼ一つである。夜になるとクルースニクの魂が身体を抜け出し、獣の姿になってクドラクと戦う。牛、豚、猪、馬——姿は話によって違うが、クルースニクの獣は必ず白く、クドラクの獣は必ず黒い。見分けの手がかりは色だけである。

戦いに勝つための条件も語られる。生まれたときに身を包んでいた白い羊膜の一片を左の脇に挟んでおくか、それを粉にして液体に溶かし、あらかじめ飲んでおく。羊膜は本人の護符であり、この一片を失えば負ける。

もっとも、伝えは一つではない。神の敵は真の光の使者に勝てないのだから、クルースニクは常に勝つのだ、とする話もある。この場合、戦いの結果ははじめから決まっていて、語られるのは戦いの様子だけになる。

クドラクは黒い狼の姿をとり、その正体は邪悪な魔術師とされた。疫病と凶作の原因と考えられ、確実に葬るにはセイヨウサンザシの杭で刺し貫くか、膝の下の腱を切ってから埋めねばならない。これを怠れば、さらに強い怪物として蘇る。

図像と象徴

古い図像は伝わらない。本項では主画像を置いていない。

象徴の中心にあるのは、生まれたときの羊膜である。羊膜をかぶって生まれるという珍しい出産は、ヨーロッパ各地で特別な徴と見なされた。イストリアではその色が運命を分ける。白ければ守る側、赤や黒であれば害をなす側になる。生まれた瞬間に善悪が割り振られるという発想であり、当人の意志も行いも関わらない。

もう一つが色の対である。白い獣と黒い獣が夜ごと戦い、その勝敗が村の収穫を決める。抽象的な善悪ではなく、麦の実りという具体的なものが賭けられている点が重要である。

関係する神格・退治した英雄

名の由来については、「十字架」を意味するクルスト(krst)から導く説が広く行われている。セルビアではこの語が村境を示す石標を指す。もう一つ、「復活」を意味するスラヴ語と同じ語根に遡らせ、名そのものが「蘇らせる者」ほどの意味だとする説もある。なお日本語の紹介にしばしば見える「語源は十字架を意味する Krat」という説明は、krst の誤記が広まったものと見られる。

クルースニクとクドラクの戦いを、キリスト教以前の二元論の名残と見る説がある。日本語圏でよく紹介されるのが、雷神ペルーンと地下の蛇ヴォーロスの永遠の戦いが形を変えたものだ、という読みである。ただしこれは有力な仮説の一つであって、確かめられた事実ではない。口伝という性格上、クルースニクをめぐる伝承のどこまでがスラヴ神話に由来し、どこからが別系統のシャーマニズムに由来するのかを見きわめるのは難しい。

より慎重な見方もある。収穫の行方をめぐって二つの呪術師の集団が争うという主題は、北アドリア海沿岸の諸民族に、民族の別を問わず広く見られる。隣接するフリウリのロマンス系住民には、クルースニクにあたるベナンダンティ(benandanti)がいた。彼らもまた羊膜をかぶって生まれ、夜になると魂が身体を離れ、ウイキョウの茎を手に魔女たちと戦って畑の実りを守るとされた。カルロ・ギンズブルグが16〜17世紀の異端審問記録から明らかにしたこの信仰は、クルースニクの伝承と細部まで重なる。民族の境ではなく、地域の境がこの信仰の輪郭を決めているように見える。

キリスト教化ののちには、クルースニクは「バビロンの黒魔術学校」で術を学んだと語られるようになった。それでも貧しい者の気前のよい味方という性格は保たれている。異教の呪術師が悪魔的な出自を与えられながら、善玉のまま残ったわけである。

なお日本語の紹介に見える「ハンガリーではタルボシュと呼ばれる」という記述は、ハンガリーのタールトシュ(táltos)を指す。これも羊膜や余分な歯を持って生まれ、脱魂して雄牛の姿で戦うシャーマン的存在で、比較の相手として妥当だが、同じ名で呼ばれるわけではない。セルビアのズドゥハチ、ロシアのオボロテニも、脱魂と変身という点で並べられる。

文化的足跡

日本語圏では、吉田直の小説とそのアニメ化作品『トリニティ・ブラッド』に登場する「クルスニク」によって知られるようになった。吸血鬼の血を吸う存在という設定で、対になる「クドラク」の名も作中に現れる。『真・女神転生』シリーズにもクルースニクとクドラクが繰り返し登場し、『テイルズ オブ エクシリア』では主人公一族の名と兵器の名に用いられている。

いずれの作品でも、この存在は「吸血鬼を狩る強力な者」として描かれる。伝承の側でクルースニクを成り立たせていたのは、羊膜という偶然と、麦の実りという日々の関心であった。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1084678 — 骨格データの出典