キング
キングー · クィング · Qingu
ティアマトの配偶者にして軍の指揮官。運命の書板を胸に結ばれて神々の頂点の地位を得たが、マルドゥクに敗れて処刑され、その血から人類が作られた。人が神に仕えるのは血に反逆の罪があるためとされる。
解説
概要
キング(Qingu、キングとも)は、メソポタミアの神である。『エヌマ・エリシュ』において、ティアマトの従属者にして配偶者であり、マルドゥクの敵として現れることで最もよく知られる。敗北ののち殺され、その血が人類の創造に用いられた。
もともとはティアマトと無関係な別の神話の敵役であったかもしれないが、その作品は現存せず、キングへの言及の大半は『エヌマ・エリシュ』におけるマルドゥクの手による敗北を暗示するものである。
神話・物語
『エヌマ・エリシュ』によれば、若い神々がアプスーを殺したのち、ティアマトは復讐のため十一の怪物を生み、キングを軍の指揮官に任じた。ティアマトはキングを夫とし、「運命の書板」(トゥプシマティ)をその胸に結びつけて、神々の頂点の地位を与えた。
しかしマルドゥクはティアマトを倒し、キングを捕らえて運命の書板を奪った。神々の会議は、アプスーとティアマトの殺害を唆した罪をキングに負わせ、これを処刑する。エアはキングの血から人間を作った。人間が神々に仕えて労役を担うためである。
人類が反逆者の血から作られたという設定が、この神を規定する。人が神に仕えるのは、その血に反逆の罪があるからである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
運命の書板を胸に結ばれるという場面は、アンズーが同じ書板を盗む神話と対応する。書板は神々の支配権の象徴であり、これを持つ者が世界を支配する。
関わる神格・伝承
ティアマトの配偶者にして軍の指揮官。マルドゥクに敗れた。その血から人類が作られた。
『エヌティラ、エンメシャッラ、キングの敗北』という別の神話にも名が現れる。エンメシャッラは同じく敗れた原初の神であり、キングはこの系列——マルドゥクあるいはニヌルタに敗れた古い神々——に属する。
文化的足跡
人類が殺された神の血から作られるという主題は、『アトラ・ハシース』でも語られる。そこでは反逆した神ウェー・イラの血と粘土が混ぜられる。神の血が人の中にあるという観念は、メソポタミアの人間論の基層をなす。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。