フシャスラ・ワルヤ
クシャスラ・ワルヤ · シャフレワル · シャフリーヴァル
ゾロアスター教のアムシャ・スプンタの一柱。名は「望ましき王国」を意味し、アフラ・マズダーの理想の統治を神格化する。金属を守り、終末には熔けた金属で世界を浄めるとされる。
解説
概要
フシャスラ・ワルヤ(アヴェスター語 xšaθra vairiia)は、アムシャ・スプンタの一柱である。名は「望ましき王国」あるいは「善き統治」を意味し、xšaθra はサンスクリットのクシャトラ(統治・支配)と同源。中期ペルシア語でシャフレワル、新ペルシア語でシャフリーヴァル。アフラ・マズダーの理想の統治が神格として立てられたものである。
敵対者は無秩序の魔神サルワ(サウルウァ)で、この名はインドの暴風神ルドラの別名シャルヴァに対応する。イランで魔神の側へ回された神格の一例である。
神話・物語
『ガーサー』の段階では、この霊は特定の被造物と結びついていない。金属の守護者とされるのは後代の文献においてで、その経緯は古いイランの宇宙観から説明されている。天空は最初の被造物であり、石でできていると考えられていた——『ヤスナ』30.5は天を最も硬い石と呼ぶ。青銅と鉄が知られるにつれて天は水晶、すなわち石でも金属でもあるものとして語られるようになり(『ヤシュト』13.2)、やがて金属一般との結びつきへ移った。この霊が後代に天空の神とされるのも同じ経路をたどる。
終末には熔けた金属の流れが地を覆い、義者にはあたたかい乳のように、不義者には灼熱として感じられて、世界が浄められると説かれる。統治と金属という二つの領分が、審判の場面で一つに結ばれる。
図像と象徴
イランの美術に固有の像は乏しいが、クシャーン朝の貨幣には銘によって同定できる作例がある。本サイトが主画像に掲げるフヴィシカ王の金貨は、裏面に兜をかぶり光背を負って正面を向き、長い柄の武器を執る神像を打ち、バクトリア文字で ÞΑΟΡΗΟΡΟ(シャオレオロ)と銘する。表面は、兜と鎖帷子をまとい笏を執る王の胸像である。抽象概念にすぎなかった霊が、王権の意匠のなかで武装した守護者の姿を与えられている。
系譜と関係
六柱の一で、伝統では男性として扱われる。暦では各月の第4日と年の第6月を司る。
文化的足跡
イラン暦の第6月シャフリーヴァルにその名が残る。