ジュルパリ
ジュルパリ · イウルパリ · Jurupari
トゥピの森の霊であり、アマゾン北西部では掟をもたらした文化英雄。宣教師が悪魔と同定し、別の民族の英雄にもこの名を当てたため、性格の異なる二つの存在が同じ名で呼ばれるようになった。女が見てはならない聖なる笛の儀礼に関わる。
解説
概要
ジュルパリ(イウルパリとも)は、ブラジルとコロンビアの先住民に知られる名であるが、指し示すものは地域によって大きく異なる。ブラジル沿岸のトゥピにとっては夜に人を惑わす森の霊であり、アマゾン北西部の諸民族にとっては、男たちの秘密の儀礼と掟をもたらした文化英雄である。この二つが同じ名で呼ばれるようになった背景には、宣教師による名づけがあった。
なお本サイトの分類では、南米先住民の体系に含めて扱う。
二つのジュルパリ
沿岸のトゥピの伝承では、ジュルパリは森に住み、夜に人を惑わせる霊であった。名は「歪んだ口」を意味すると解される。16世紀、イエズス会の宣教師たちはこれを悪魔と同一視し、布教のなかで悪魔の名として用いた。
一方、リオ・ネグロ上流のトゥカノやアラワクの諸民族のあいだで、ジュルパリは太陽を父とし、人々に掟と儀礼を与えた英雄として語られる。宣教師たちはこの別の民族の英雄にも同じ「ジュルパリ」の名を当てた。性格の異なる二つの存在が、外から付けられた名によって一つに括られたのである。
女が見てはならない笛
アマゾン北西部のジュルパリの儀礼では、聖なる笛と仮面が用いられる。この笛を女が見ることは厳しく禁じられ、見た者が殺されたとする記録もある。少年たちは成年式で初めて笛の音を聞かされ、その正体を明かされる。男だけが共有する秘密が、成人男性の集団の境界を作っているのである。女に見せてはならない秘密の楽器という形式は、パプアニューギニアやオーストラリアの先住民にも見られ、それぞれ独立に生まれたものと考えられている。
多くの伝承は、この笛がもとは女のものであったと語る。はじめは女が笛を持ち、社会を支配していたが、男たちがそれを奪い、以後女に見せなくなったという。この型の物語は、男性の優位を正当化すると同時に、その秩序がはじめから当然だったわけではないことも示しているとして、人類学で論じられてきた。
記録と文学
1890年、イタリアの探検家エルメート・ストラーデッリが『ジュルパリ伝説』を記録して刊行した。マリオ・ジ・アンドラーデの小説『マクナイーマ』(1928年)も、これらの神話を素材の一つとしている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。儀礼の笛と仮面は、部外者に公開されないものである。
関わる神格・伝承
文化的足跡
ジュルパリの儀礼は、今日もアマゾン北西部の一部の共同体で営まれている。
なお南米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。